サムシンググレートが美しい数の調和にした?--『自然現象はなぜ数式で 記述できるのか』を書いた志村史夫氏(静岡理工科大学教授、米ノースカロライナ州立大学教授)に聞く
その力の大きさはどう決まるか。磁気力、たとえば二つの磁石の間に働く力、電気力つまり電気のプラスとマイナスの二つが引き合う力、それに万有引力で二つの物体の間に働く力、その大きさはいずれも、二つのそれぞれが持っている物性の掛け算に比例し、距離の2乗に反比例することがわかった。それはたとえばF=m1×m2÷d2という形式の同じ数式で表せる。自然界に存在するまったく異なる力の大きさを同じ形の数式で表すことができるのだ。
──それら“人間自前”の数式をベースにすれば、宇宙遊泳も可能なのは不思議です。
人間にまったく関係ない自然現象を人間が100%作った数式で表せて、なおかつ宇宙空間に人間をほぼ正確に旅立たせ帰還させる。実は、スペースシャトルや人工衛星の周回はそんなに難しい科学ではなく、ニュートン物理学の範囲でできる。今やニュートン物理学では説明できない自然現象も、すべて量子物理学で説明が可能だ。
──万有引力があるのに、噴射せず地球を周回できます。
あれは実は落ち続けている。重力加速度に従ってつねに落下しているが、地上には落ちてこない。もろもろの微妙な問題を無視すれば、秒速約8キロメートルの速さで水平方向に発射すると、地表のカーブに沿った軌道をほぼ維持できる。静止衛星の場合は、24時間で地球を1周しているので止まっているように見える。
──無重力も関係していますか。
宇宙ステーション内の映像の影響だろうが、無重力状態と表現する人が多い。あれは「無重量状態」と呼ぶのが正しい。宇宙ステーションも、周回中つねに落下しているから、もちろん重力が働いている。つまり、「無」なのは重さ(重量)なのだ。こういった体験に近いことは、エレベーターに体重計を持ち込んで、上がり下がりで計測の実験をしてみるとわかる。