サムシンググレートが美しい数の調和にした?--『自然現象はなぜ数式で 記述できるのか』を書いた志村史夫氏(静岡理工科大学教授、米ノースカロライナ州立大学教授)に聞く

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--数学には無理数というものがあります。それで無理やり、きれいな数式にしているところもありませんか。

そもそも、この無理数、有理数という表現は明らかに誤訳といえる。数学的な意味は、分数で表せるかどうか、つまり比があるかないかだから、「無比数」「有比数」という表現が適切なはずだ。

──円周率は無理数です。

古代ギリシャ以来、最も完全な形とされてきたのが円。ところが、直径が1の円の円周πは確かに無理数。自然界の中で最も美しく、完全な形と思われる円の中にやっかいな無理数が潜んでいる。「宇宙には(潜在的な)美しい数の調和がある」というピタゴラス派の教義から外れた。

──四角形でも、その対角線の長さにルート2が入り込みます。

これも無理数で、きれいではない。円と四角形には、そんな不思議な数字が潜んでいる。何かの「いたずら」としか思えない。

私は、この宇宙には人類以上の知的生命体がいると思っている。人間の持っている尺度では「いたずら」とされるが、彼らの持っている知性では自然な形で表せるのかもしれない。ただ、その知的生命体は交信可能な範囲にはいないようだ。

──「人類原理」で解釈する人もいます。

宇宙論の分野では「地球上に観測者として人間が存在するという事実によってすでに、宇宙に関する諸理論は拘束を受けている」とする「人類原理」という考えがある。

宇宙に見出される秩序は、それは自然、宇宙が潜在的に有している秩序ではなくて、人間が、人間の「手持ちの道具」(科学、数学)を使って作り上げた秩序である、という科学者や数学者もいる。たまたま説明できることを説明しているから、あるいは数式で記述できることだけを記述しているから、「美しい数の調和がある」というのだ。

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