この側面を重視すると、FRBの金融政策の転換の悪影響が、原油安としてまず表面化している。そうなると、原油安が一向に止まらない状況が、性急なFRBの政策転換が世界経済の減速をもたらすことを示唆しているかもしれない。筆者自身はそのシナリオにベットしていないが、歴史的な原油価格下落については、それが持つ意味を幅広く考えるのが賢明だろう。
米国経済は堅調、「3度目の投資チャンス」も
筆者はこうした側面も意識しながら、ロシアを巡る混乱と同時に起きている原油安について、12月半ばの当時の株価がボトムをつけたタイミングで、コラムを書いた。ここで、(1)原油価格下落について資源市場の需給バランスの長期的な変化がもたらした面を強調し、(2)同時に起きているロシア経済の混乱についても春先のクリミア半島侵攻などの軍事的な緊張による長期的な帰結という意味で「新たな危機」ではない、と比較的楽観的な見通しを示した。その後幸い株高に転じたが、この株高もわずか2週間だった。
いま再び足元で起きている、政治・地政学リスクの高まりという不確実性がもたらす金融市場の混乱は、同様にリスク資産にとっては投資機会であり、この意味においては、前回2回が押し目買いの好機だったことを踏まえ、「2度あることは3度ある」となり得る。なので、1か月前の先のコラムも、そのまま使えると考えている。
その拠りどころは、肝心の米国経済の足腰が非常にしっかりしていることだ。年初早々に発表された12月米サプライマネジメント協会(ISM)調査による企業景況感指数の下振れが、楽観的な米国株のムードを冷やしたが、指数の中身は決して悪くはない。昨年の12月29日の東洋経済オンラインのでのコラム「2015年予測、『米国経済は一段と加速する!』」でも書いたが、2015年の米国では、財政政策が景気刺激的に作用することもあり、引き続き高成長が続くとみている。
2013年末にFRBがテーパリング(量的緩和の縮小)を開始してから、米経済に対して悲観的な見方が一部で広がった。ただ実際には2014年春先から米経済は年率3%超の高成長となり、FRBによる我慢強い金融政策運営が成功し、米国株高とドル高が実現した。
だから2014年に何度かあったマーケットの混乱が相次いで押し目買いの好機となったわけだが、米国を中心に世界経済が堅調に成長する状況は、2015年も変わらないと考えている。もちろん産油国であるロシア経済は相当厳しい状況となるが、年央から欧州中央銀行(ECB)の金融緩和やこれまでのユーロ安の効果で、デフレリスクが意識される欧州経済の持ち直しが予想され、世界経済全体は支えられるだろう。
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