男女で明暗分かれたプロゴルフ2015 求められる絶対的スターの存在

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さて、男子はどうだろう。

2015年は、2014年に比べて3試合増の27試合、賞金総額も2億2000万円あまり増えて34億7750万円になった。2007年以降、24~25試合と女子の3分の2に満たない試合数からちょっと前進したが、日本ゴルフツアー機構の会見では、女子のような華やかな雰囲気はなく、粛々と発表された印象を受けた。

「かつての栄光」には及ばない

歴史の方はどうか。1980年代、男子は青木功、尾崎将司、中嶋常幸のいわゆる「AON」の時代に賞金総額が初めて10億円を突破し、試合数も40試合前後に急増した。1990年代は尾崎将司の独走に、丸山茂樹ら若手世代が挑んでは跳ね返されるという試合としての魅力やもちろんバブル時代の影響もあって、1993年には賞金総額は40億円を超えている。

その後、尾崎の衰えや丸山の米ツアー常駐などで2000年代からジリ貧となり、2008年には24試合まで減って底を打った。賞金総額は2007年には30億円そこそこで女子に逆転されている。

そこに出てきたのが石川遼。2007年にアマチュアで優勝し、翌年プロ入り。大人気ゴルファーになった。ただ、ツアーの試合数は増えなかった。石川のスポンサーに絡む賞金総額2億円の高額大会は出来て賞金総額は若干増える一方で、やめる大会もでてきた。こちらは、経済不況の影響を振り払うまでにはいかなかった。

同時期に池田勇太、続いて松山英樹が出てきて、かつての「AON」のようなライバル対決の期待もあったが、石川、松山はすぐに米ツアーに挑戦。日本を空けることで企業もトーナメント開催効果が薄いと判断したのだろう。テレビコマーシャルも石川に集中した。2015年に増える3試合のうち2試合は他ツアーと共催の東南アジアでの大会で、日本の出場選手の数も限られている。日本の国内試合は24試合と底を脱していないのが実情で、「AON→ジャンボ」時代を懐かしむ声も多い。

男女とも、絶対的スター不在の時期には、賞金額も試合数も減って「冬の時代」を経験している。どのスポーツ界でも同じことだが、次々とそんな選手がつないでいくプロ野球やサッカーには、やはり底辺の広さを感じる。国技の大相撲でさえ、日本人横綱は空前の「若貴ブーム」を巻き起こした1998年若乃花を最後に出ておらず、モンゴル勢3横綱ではどうしても平日は空席が目立つ。

ゴルフ界、いまの女子ツアーの隆盛を生み出した宮里藍も2015年で30歳を迎え、続いた世代も20代後半になっていく。男子の石川遼、松山英樹は当分、日本には帰ってこないだろう。どんな天気の時にも「次のスター」が出てくれないと、あっという間に「冬」になる。今年のツアーはどうだろうか。

赤坂 厚 スポーツライター

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あかさか あつし / Atsushi Akasaka

1982年日刊スポーツ新聞社に入社し、同年からゴルフを担当。AON全盛期、岡本綾子のアメリカ女子ツアーなどを取材。カルガリー冬季五輪、プロ野球巨人、バルセロナ五輪、大相撲などを担当後、社会部でオウム事件などを取材。文化社会部、スポーツ部、東北支社でデスク、2012年に同新聞社を退社。著書に『ゴルフが消える日 至高のスポーツは「贅沢」「接待」から脱却できるか』(中央公論新社)。

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