通貨急落で国民は塗炭の苦しみを舐める、というのはお定まりのパターンだが、かといってロシア経済は西側メディアが喧伝しているほど悪くはないらしい。
冬ごもりをしているロシアを侮るな
現地から聞こえてくるのは、「スペインのハムが食べられなくなったから、南米産や国産で我慢している」とか、「通貨が下がる前にと、高級車の駆け込み需要が起きた」など、どこかズレた感じのニュースである。
ちなみにロシアの家庭では、昔から「ボルシチセット」(ビーツ、ジャガイモ、ニンジン、キャベツ、玉ねぎ)を育てる自家菜園が盛んである。ロシアで消費されるジャガイモの約半分は、家庭で作られているとの統計もある。熊は用心深い生き物なのだ。
ベテランのロシア駐在員がいわく。
「ロシア人は何度もショックを体験しています。1991年には国家が崩壊し、1998年には金融危機に遭い、2008年にも石油価格急落で大慌てした。だから財政金融政策は保守的だし、各家庭はそれぞれに蓄えこんでいます。たぶん1年くらいは耐えられるでしょう」。
その間には石油価格も戻るだろうから、プーチン大統領の「全治2年」という診断はいい線を行っているのかもしれない。
問題は欧州各国だ。国民の間では反EU感情が高まり、独仏英など主要国の足並みは揃わず、対外的な緊張も深まっている。ロシアとは紛争が起きかねず、イスラム過激派によるテロも怖い。
ドイツのメルケル首相は南欧諸国の言い分に耳を傾けず、フランスのオランド大統領は支持率1割台に泣き、英国のキャメロン首相は5月に総選挙を控えて戦々恐々。ちなみにFT紙は、「総選挙後の英国は、1931年以来の挙国一致・大連立内閣になる」と予測している。そしてユーロ圏の成長率はようやくプラスに戻ったとはいえ、インフレ率が低下して「日本型デフレ」の懸念が尽きない。いやもう、見ちゃいられない。
第3位の中国発リスクにも目を向けてみよう。習近平体制の権力基盤が強化され、構造調整に動き始めているので、中国経済そのものは心配いらないだろう、とユーラシアグループは判断している。
しかし中国経済が減速すると、ブラジルや豪州のようにこれまで資源の対中輸出で稼いでいた国は堪らない。インドネシアやタイにも死角ありとする。なんと今では、世界の100か国以上が「最大の貿易相手国は中国」となっているのだ。
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