ギリシャ再び政局混迷、金融市場への影響は? 第一生命経済研究所・田中理氏に聞く

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さらに、SYRIZAが勝利した場合も単独での政権発足は困難とみられ、連立相手を探す必要がある。連立協議が暗礁に乗り上げ、12年のような再選挙となる恐れもある。政治空白の長期化や支援協議の再延長の行方なども新たな不安要素となりうる。

2012年当時と違い、危機の連鎖とはならない

ただ、ギリシャのユーロ離脱の危機が高まった12年とは幾つかの点で状況が異なる。

まず、今回は、SYRIZAの党首も「ギリシャのユーロ離脱を求めない」としている。また、12年当時は、危機がギリシャ以外の債務不安国へ連鎖するリスクや欧州の金融システム全体へ波及するリスクがあった。だが、その後、各国が財政再建や構造調整に取り組んできたほか、安全網の整備が進んだこともあり、ギリシャの混乱が他国に波及するリスクは小さくなっている。ECBが近く国債QE(国債の大量購入による金融緩和策)を開始するとの安心感も、市場利回りの上昇抑制を通じてリスクの遮断に一役買いそうだ。

――ECBが国債QEに踏み切るかどうか、時期などをどう見ていますか。

私はギリシャのことがなくても、1月にも踏み切るのではないかとみている。原油価格の下落で、消費者物価上昇率(HICP)が14年12月にもマイナス圏に転落する可能性がある。足元で中期的な期待インフレ率が下方屈折を始めており、デフレ回避には迅速な行動が必要だ。

また、ECBは1兆ユーロのバランスシート拡大が難しい場合、来年の早い段階で追加緩和の有無を判断するとしている。9・12月に行われた貸出を増加した銀行への長期資金供給(TLTRO)が不発に終わっているので、この点からも追加対応が必要となる。

法に抵触するとの懸念があるが、制度設計次第で回避可能とみられる。あとは、ドラギECB総裁が、ほかの理事会メンバーを説得して過半数を獲得できるかどうかだけで、最近のECB関係者の発言から、これは可能とみている。ドイツ連銀のバイトマン総裁が反対しても強行突破するだろう。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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