『ソーシャル・ネットワーク』--経済改革には起業の活性化が必要《宿輪純一のシネマ経済学》

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 日本では現在TPP( Trans Pacific Partnership:環太平洋経済連携協定)」などのいわゆるFTA(Free Trade Agreement:自由貿易協定)の議論が盛んである。これは国を開き沈滞する日本経済全体を改善しようとするものといっても過言でもない。

一方、米国では競争力強化のために「ヤング・リポート」「メイド・イン・アメリカ~復活などの提言」などの報告書を基に、イノベーションをベースとした競争力を強化する戦略を立てた。

現在、日本経済を成長させるためには、既存の仕組みの改善も大事であるが、まさに新しいイノベーションをベースとした「起業」の活性化こそ本来重点戦略とすべきである。

しかし、現在の日本の社会は、たいへんに保守的・官僚的になり動きが止まっているように感じられる。そもそも、前向きな気持ちや外向きの気持もなくなっている。今こそ前提のない新しいことに挑戦することが最も重要で、起業を活性化することこそが、日本経済を成長させるのではないだろうか。

少々長くて恐縮だが、日本サッカー協会元会長・川淵三郎氏のJリーグ設立に大きな影響を与えた言葉を引用したい。この言葉には筆者もいつも勇気づけられている。
 
 「時期尚早と言う人間は、100年経っても時期尚早と言う。前例がないと言う人間は、 200年経っても前例がないと言う」「そもそも時期尚早と言う人間は、やる気がないということなんだ。でも、私にはやる気がありませんとは情けなくて言えないから、時期尚早という言葉でごまかそうとする。前例がないと言う人間は、私にはアイデアがないということなんだ。でも、私にはアイデアがありませんとは恥ずかしくて言えないから、前例がないという言葉で逃げようとする。大体仕事のできない者を見てみろ。自らの仕事に誇りと責任を持てない人間を見てみろ。次から次へと、できない理由ばっかり探し出してくるだろう。仕事というものは、できないことにチャレンジをして、できるようにしてみせることを言うんだ」(二宮清澄講演会&シンポジウムhttp://www.ninomiyasports.com/sc/ni_kouen/02.htmより)

しゅくわ・じゅんいち
映画評論家・エコノミスト・早稲田大学非常勤講師・ボランティア公開講義「宿輪ゼミ」代表。1987年慶應義塾大学経済学部卒、富士銀行入行。シカゴなど海外勤務などを経て、98年UFJ(三和)銀行に移籍。企画部、UFJホールディングスなどに勤務。非常勤講師として、東京大学大学院、(中国)清華大大学院、上智大学、早稲田大学等で教鞭を執る。財務省・経産省・外務省等研究会委員を歴任。著書は、『ローマの休日とユーロの謎』(東洋経済新報社)、『通貨経済学入門』・『アジア金融システムの経済学』(以上、日本経済新聞出版社)他多数。公式サイト:http://www.shukuwa.jp/、Twitter:JUNICHISHUKUWA、facebook:junichishukuwa

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