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この協力は、科学やエンジニアリング教育の一環として行われたものだが、リトルビッツを使って火星探索ローバーのような動きをするビークルを作ることもできる。宇宙とつながるような思考を鍛え、自分でできるものを作ってしまうということを教えるわけだ。つまり、教育面でもリトルビッツは役立っているのである。

ハードウェアはもっと民主化すべきだ!

そんな製品を作ったブディアは、もともとオープンソース・ハードウェアという動きに高い関心を持っていた。

リトルビッツを開発したアヤ・ブディア(写真:ロイター/アフロ)

オープンソース・ソフトウェアという言葉は、よく聞いたことがあるだろう。ソフトウェア開発を、ひとつの会社の中だけで閉じて行うのではなく、広くデベロッパーらが参加できるようにし、多くの人々の知恵を結集しようという考え方だ。また、それを用いた製品は、後からカスタマイズや機能の追加をオープンな方法で行える。

ブディアが関心を持っていたのは、これをハードウェアで進めることだ。

「今世の中にある電子製品はメーカーが勝手に作っていて、作り替えることもできないし、いらない機能もたくさん付いている。ハードウェアはもっと民主化する必要がある」と、彼女はあるところで語っている。ハードウェアをソフトウェアと同じくらいに、ユーザーが自分の合ったものにハックできるようにするのが、あるべき姿。リトルビッツはそこへの一歩というわけだ。

ブディアは、カナダ生まれ。ただ育ったのは両親の母国のレバノンだった。小さい時に父親にエンジニアになるようにと勧められたが、自身が夢見ていたのは建築家。テクノロジーとアートをひとつのものとして捉えることができると気づいたのは、ベイルートの大学を卒業してからアメリカに渡り、さらにマサチューセッツ工科大学のメディアラボで研究を始めてからだった。

リトルビッツのアイデアに手をつけたのは2008年のこと。だが、当時はモデュラー形式の電子機器という考え方がなく、かなり苦労した。だが今や全米チェーンの電気量販店でも販売されるほどの人気の製品になった。何よりも、老若男女がちょっとした電子機器や電子のしくみを手作りしようとし始めたことがすごい。

スマートフォンがかつての大型コンピュータほどの性能を持っていることは、現代の誇らしい進歩だ。だが、それに頼るばかりでは、本当は自分のもの作りの能力は退化していくのかもしれない。

ブディアは、そんなことを感じさせる新しい現代の製品を世に出したのだ。
 

瀧口 範子 ジャーナリスト

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たきぐち のりこ / Noriko Takiguchi

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、政治、文化、社会一般に関する記事を新聞、雑誌に幅広く寄稿する。著書に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか? 世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』『行動主義:レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家:伊東豊雄・観察記』、訳書に『ソフトウェアの達人たち:認知科学からのアプローチ』(テリー・ウィノグラード編著)、『独裁体制から民主主義へ:権力に対抗するための教科書』(ジーン・シャープ著)などがある。

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