遺伝子検査で「運命」まではわからない アンジェリーナ・ジョリーの検査との違いは?
「遺伝子検査=白黒がつくもの」というイメージは、2013年に米女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが遺伝性乳がんの遺伝子検査の結果を基に乳房の予防的切除をしたことの影響もあるかもしれない。しかし、ジョリーさんが受けたのは診断を目的とした医療用の検査で、本稿で話題にしている個人向け遺伝子検査とは別物。ジョリーさんの場合、BRCA1という遺伝子の変異が見つかり、87%という高い確率で遺伝性乳がんの発症が予見されたため、健康な乳房の切除に踏み切ったのだ。
事業者による個人向け遺伝子検査では、検査結果が診断や治療方針に影響を与えるような遺伝性疾患を扱うことはできない。医師法第17条で「医師でなければ、医業をなしてはならない」と定められているからだ。扱えるのは、遺伝要因以外に環境要因が大きく影響する、生活習慣病やがんなどの病気や体質などに限られる。
そのため、結果の文言はあいまいにならざるをえない。「あなたの遺伝子型の脳梗塞を発症するリスクは日本人平均の1.5倍です」「あなたの遺伝子型は飲酒で顔が赤くなりやすいタイプです」――あくまで「あなた」ではなく、「あなたと同じ遺伝子型を持つ集団」の傾向がわかるだけ。その集団の中で自分がどこにいるかまではわからない。
「肥満体質」の検査は不十分?
病気のリスクを示す「○倍」も数字が大きいとドキッとするかもしれないが、「5000人に1人」の確率が「5000人に2人」に上がっただけでも「2倍」。検査の性質上、運命が決まってしまうほどのことが書かれているはずはない。むしろ漠然としてとらえ方が難しいくらいだ。
難点はそれだけではない。現在の遺伝子検査では、本来多数存在するかもしれない関連遺伝子やそれらの遺伝子にある塩基のうち、ごく一部しか検査に活用していない。
たとえば、肥満体質の検査では、3~4個の遺伝子の中の特定の塩基の多様性を見ることが一般的。しかし、人のエネルギー代謝に影響する遺伝子は、見つかっているものだけですでに200以上。どの遺伝子のどの塩基が変異しているかによって、影響度に差があることもわかっている。
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