遺伝子検査で「運命」まではわからない アンジェリーナ・ジョリーの検査との違いは?

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各社は「この検査ではこの学術論文を根拠にこの遺伝子を解析しています」というような形で科学的根拠を示していることが多いが、その検査や論文で取り扱っていない遺伝子情報が本来大きな影響を及ぼしている可能性は否定できない。検査会社によって調べる遺伝子や結果の算出方法が異なるため、別の検査で全然違う結果が出ても不思議ではない。

また、子どもの才能を調べる遺伝子検査の一部では、ベースにしている研究の結論から飛躍した解釈が横行しているケースも見受けられる。たとえば、「色彩感覚」の検査で使うCBP・CBD遺伝子は、赤緑色盲の遺伝子。「(音楽にかかわる)聴覚」の検査で使われるのはGJB2やMT-CO1といった難聴の遺伝子。異常がなければ「才能がある」という判定が下されるとしたら、違和感を持つ人も多いのではないか。

臨床遺伝学を専門とする北里大学の高田史男教授は、「今の遺伝子検査は根拠に乏しいうえ、受けた人の不安をあおったり、逆に必要以上に安心させたりしてしまう」と手厳しい。

事業者も問題点を認識

事業者側にも、「遺伝子検査は万能ではないということを、もっと知ってもらわないといけない。結果の正しい理解を助けるためにヒストグラムで伝えるなど工夫を続ける」(DeNAライフサイエンスの深澤優壽社長)との認識がある。

ただ遺伝子研究は日進月歩で進展しており、今後さらに信頼性の高い検査ができるようになる可能性は十分にある。現在、数十万人規模の集団に対して遺伝子情報や生活習慣と健康状態などの関連を長期間にわたって追跡調査する「コホート研究」が世界中で本格化している。10~20年後にはコホート研究で得られたデータベースを基に、より精密な遺伝子検査ができるようになっているかもしれない。

だが、少なくとも、今の遺伝子検査を全面的に信頼しきってしまうのは考えもの。健康に目を向けるきっかけ程度にとどめておくのがよさそうだ。

長谷川 愛 東洋経済 記者
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