世界的規制強化を警戒 市場経済を再認識せよ
ところが、米国では同政策に対する批判が根強い。たとえば、尖閣諸島事件のビデオ流出問題で、一躍、有名になった動画掲載サイト、「YouTube」に登場した量的緩和批判のアニメーションビデオが話題になっている。コンピュータグラフィックスで作成された2匹のウサギが、量的緩和策について痛烈な批判を繰り広げるという内容だ。12月初旬の時点で、すでに300万回以上も視聴されたという話もある。
こうした批判の根底にあるのは、実体経済の悪化だ。量的緩和などによって、米国株式は上昇しているものの、実体経済には厳しさが増している。中でも州財政の悪化は抜き差しならない事態にまで至った。教員に給料が支払えないため、小学校の授業が週2日しかないような州もある。郵便局も従来どおりの業務を維持できなくなっているようだ。そのうえ、デフレが懸念されている中にもかかわらず、食料品、ガソリンなどの生活必需品の価格が上昇している。地下鉄の料金も上がった。
しかも、量的緩和の余波といえる長期金利上昇と地方債に関する税制優遇措置の後退などを受けて、信用力が毀損した地方債の発行環境は悪化するばかりらしい。
「クリスマス商戦が良好と報じられているが、それはニューヨークの話。地方は暗い年の瀬だ」
在米シンクタンク関係者がこう断言するように、明るいのは派手なイルミネーションで輝いているニューヨークの5番街あたりだけかもしれない。米国の津々浦々では、経済悪化から生じた国民の不満の鬱積が広がっている。
米国による巨額の量的緩和政策は、国際的な過剰流動性にもつながっている。なにしろ、現在、ドルの流通量は世界の名目GDPの規模を数倍上回り、クロスボーダーで駆け巡っている。この巨額マネーが流入する新興国ではバブル化が進展し、資本(流入)規制の導入・強化や金融引き締めに舵を切らざるをえなくなったことは、言うまでもない。
新興国だけではない。国際流動性を発生させた米国など先進国にも、マネー狂奔に対する警戒感がある。それを印象付ける一文が、11月11~12日に開催されたG20ソウル・サミットの首脳宣言に盛り込まれたことは、あまり報じられていない。「シャドーバンキング」規制である。