「塩分の取りすぎに注意」「甘いものはほどほどに」「野菜食中心の食生活を」「適度な運動を心掛けよう」──。健康維持のための啓発は、どこかむなしい。メッセージを正しくキャッチするのは、元から健康意識が高い人ばかり。生活に余裕がなく、最も健康を害しやすい層には届きにくく、両者の健康格差はむしろ拡大する。
このジレンマを乗り越える目的で、各国の公衆衛生政策に新たなトレンドが生まれている。啓発のように個人の心掛けや努力を促すのではなく、何もしなくても健康になる、不健康な要素を遠ざけたくなる社会環境を作るのだ。いつでも必ず理知的で賢明な選択をするわけではないという人間理解に基づいた、政策の新展開だ。
英国人の脳卒中が激減! 科学者集団の遠大な計画
英国人は何も頑張ることなく、少し健康になった。その変化の原因には、彼ら自身も気づかなかった。
英国人1人当たりの塩分摂取量は2011年までの8年間で15%減少し、8.1gになった。この減塩によって血圧も改善。高血圧を危険因子とする虚血性心疾患と脳卒中の10万人当たり死亡者数も4割減っている(図表1)。これらの改善により、英国全体で年間15億ポンド(約2300億円)以上の医療費の削減につながったとされる。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録頂くと、週刊東洋経済のバックナンバーやオリジナル記事などが読み放題でご利用頂けます。
- 週刊東洋経済のバックナンバー(PDF版)約1,000冊が読み放題
- 東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
- おすすめ情報をメルマガでお届け
- 限定セミナーにご招待
無料会員登録はこちら
ログインはこちら