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健康格差 雇用と所得の差が、命の差につながる

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健康でいられるか否かは、自分の管理能力の問題だ──この通念が今、急速に揺らいでいる。糖尿病を悪化させる非正規労働者。受診を抑制する低所得者。肥満と虫歯が顕著な貧困家庭の子どもたち。公衆衛生の研究者が「日本の経済成長を損なう時限爆弾」と呼ぶ、健康格差の実態に迫る。

(本誌:杉本りうこ、中川雅博、印南志帆、高見和也、中原美絵子)

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「あれっ? このにおいって、ひょっとして……」。東京都内に住む石田卓さん(28、仮名)は、自宅のトイレでぎょっとした。自分の尿から、何ともいえない甘いにおいが立ち上ったのだ。今年1月のことだ。

急いで行った地元の内科で、医師にこう言われた。「数値的にはまだ糖尿病ではありません。でもあなたのように急に体を動かさなくなると、糖尿病になる場合があります。まずは食事を見直してください」。

石田さんは都内の中堅私立大学を卒業したが、就職氷河期で内定を逃し、非正規雇用の建設作業で収入を得てきた。尿に異変が起きたのは、現場でのケガをきっかけに仕事を辞め、求職中の時期だ。確かに、肉体作業をしなくなったのに食べるものはほとんど同じだった。

求職活動の結果、石田さんは4月に大手引っ越し会社の契約作業員になった。再び肉体作業が始まったものの、どう考えても体によくないある習慣がついてしまった。日に何度もコンビニに寄り、買い食いするのだ。

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