「なぜ足立区民の健康寿命は都平均より2歳短いのか」──刺激的な問いかけが表紙に躍るのは、足立区の広報紙だ。2013年秋、区の長期的な健康施策を発表する時期に区民に配られたものだ。荒川と隅田川に挟まれた庶民的なこの地域が実は、深刻な健康格差に直面している。
広報紙が指摘している健康寿命とは、「健康問題で日常活動が制限されずに生活できる期間」を指す。足立区民は男女とも、東京都平均より約2歳短い(図表1)。
しかも平均寿命にも同じ傾向がある。疾病ごとに見ると、都内で突出しているのが糖尿病の医療費(図表2)。治療を中断するなどし、人工透析を必要とするまで重症化させる患者が多い。野菜の摂取量からも生活習慣病を招く食生活がうかがえる(図表3)。
そして今、懸念されているのが、子どもたちへの「不健康の連鎖」だ。負のスパイラルは貧困や虐待、教育だけではないのか。足立で暮らす人々や行政の現場を訪ねた。
焼きそばが物語る区民の生活実態
足立は坂の少ない街だ。週末の昼下がり、花畑地区の住宅街をひたすら歩いていると、20代と思われる数組の家族が自宅車庫でバーベキューを楽しんでいるのを見つけた。
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