熱帯感染症と戦う「GHITファンド」の大構想

日本の創薬技術をグローバルヘルスへ

BT Slingsby● 公益社団法人・グローバルヘルス技術振興基金CEO(専務理事)。医師、医学博士。ジョージ・ワシントン大学医学部(医師)、東京大学大学院医学研究科(博士)、京都大学大学院医学研究科(公衆衛生修士)などで学ぶ。エーザイ・グローバルアクセス戦略室長を務め、エーザイ-クインタイルズ社ワールド・ヘルス・イニシアチブを主導。日本国際交流センター「グローバルヘルスと人間の安全保障」運営委員も務める。

世界基金の発案をはじめ、医薬品の提供、医療のインフラ整備などグローバルヘルスに対する貢献で、これまで、日本は欧米に劣らない成果を上げています。

そもそも、われわれがターゲットとしているNTDsへの支援は、故・橋本龍太郎首相が言い始めたものです。にもかかわらず、新薬開発の部分がすっぽり抜けていた。

日本の創薬技術は間違いなく世界のトップクラスですし、200以上の製薬会社がある。そうでありながら、その技術が国際貢献に生かされていない。

産官学の仕組みを通してどうにかしてこの能力を引き出したい、さらに単なる研究支援で終わらせず、蔓延国の患者に薬を届ける「世界初のビジネスモデル」として成功させたい、と考えました。

医薬品開発に対する研究基金は、通常90%以上を公的機関が負担しており、民間資金が半分を占めるというのは世界でも例がありません。理事会(会長は黒川清・東京大学名誉教授)、アドバイザリーパネル、投資案件の選考委員会のメンバーも日本人は半数以下という、国際色豊かなグローバル組織ですが、拠点が東京にあるというのもユニークな点ではないでしょうか。

ゲイツ財団はイノベーションの観点で出資

――パートナーには日本の政府組織や企業のほかにビル&メリンダ・ゲイツ財団がはいっていますね。

ゲイツ財団の参画は、このプロジェクトの発案者の一人であるタチ山田さん(山田忠孝・武田薬品取締役)が、以前に財団のプレジデントを務めていた縁があったから。ゲイツ財団は中東、南アフリカ、中国、インド、ブラジル、カナダなど世界各地で多くの官民パートナーシップを行っています。国という単位では考えず、イノベーションで見ています。ですから、拠点が日本であることも、政府機関とのパートナーシップという点もまったく問題はありませんでした。

3年ほど前になりますが、山田さんが持っていたマッチングファンドのアイデアを聞き、当時エーザイで途上国戦略を担当していた私が持っていた産官学のパートナーシップのアイデアと合わせて何かできないかと思い、どのように具現化できるかを二人で話し合いました。

その後、エーザイの内藤晴夫CEOの了承を得て、ゲイツ財団、外務省、厚労省に働きかけました。参議院議員の武見敬三さんもキープレーヤーとして動いてくれました。並行して製薬大手のトップにもコンセプトを説明したところ、賛同を得ることができました。2012年8月には設立準備委員会を立ち上げました。同床異夢とならないよう、目的やガバナンスなどの方向性をすりあわせました。

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