熱帯感染症と戦う「GHITファンド」の大構想 日本の創薬技術をグローバルヘルスへ

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スリングスビー氏は「子どもの頃に住んでいたエジプトで、リンパ系フィラリア症の後遺症に苦しむ現地の人に出会い、医師になってからも目の前の患者を治すこと以上に、目の前にいない患者に対して何ができるかをずっと考えてきた」という。

――どういった研究がターゲットになりますか。

HIV、マラリア、結核とNTDsのワクチンや治療薬を研究する大学・研究機関や企業が対象になりますが、必ず海外のファーマ、研究機関との共同研究であることが条件です。開発が成功したあとの許認可や製造、物流などの問題をクリアし、できるだけ早期に患者の手元に薬を届けるためです。

設立から1年半で、マラリア、結核、シャーガス病、住血吸虫症、フィラリア症の治療薬、ワクチンの研究30件に対し33億円超を出資しています。研究の進捗度合いはさまざまです。現時点では、医薬品候補物質の探索段階から臨床第1相までの案件があります。臨床1、2相段階までであれば、創薬ベンチャーも歓迎します。グローバルな提携先を探すお手伝いもできる。アウトリーチに関心のあるバイオベンチャーへの支援は、日本のバイオテクノロジー産業育成という国家戦略にも合致します。

BSL-4施設の稼働には国民の意識改革も必要

――しかし、日本ではBSL(バイオセーフティレベル)-4の研究施設が2件とも現時点では運用できない状態です。感染症治療薬の研究開発にとって大きな障害となりませんか。

直接の影響はないと考えています。われわれはグローバルな研究を推奨しており、日本国内での研究に限定していません。バーチャルでも十分に対応可能だと思います。

ただ、BSL-4施設の稼働は、早急に解決しなければならない問題です。バイオセキュリティは、元来は国民の安全を守るための政策でした。しかし、ボーダーレスとなった現在では国境はもはや意識されなくなっています。それよりも、国際社会全体のバイオセキュリティを考えなければならない。

注)BSL(バイオセーフティレベル)とはバイオ研究施設の安全管理基準。レベル1から4段階に分かれ、4が最高リスクレベル。エボラ出血熱や天然痘などのウイルスがレベル4に該当する。

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