インド新戦略車はトヨタを救えるか(下)
(上より続く)
しかし現在のトヨタは、新興国シフトを鮮明にせざるをえない。10年3月期決算では日本と欧州が営業赤字。北米は金融事業の貢献で何とか営業利益を出せたが、かつての水準に遠く及ばない。11年3月期もこの流れは変わらず、トヨタの営業利益のほとんどは新興国、中でもアジアが稼いでいるのが実情だ。TKMの中川宏社長は「主要市場の伸びが鈍い中でインドの役割は大きい。トヨタの成長センターとして頑張っていく」と意気込む。
一方で、カローラのような従来の世界戦略車は、新興国では必ずしも売れるわけではない。インドでは「カローラは品質はいいが価格が高いとの評価」(豊田社長)だ。
新興国の自動車市場に詳しい、京都大学経済学部の塩地洋教授はこう指摘する「日本国内のカローラユーザーは平均年齢58歳。そうしたユーザーの要求を満たす機能と品質をいったん設定したうえで、各国向けのローカライゼーション(現地化)を進めるのには、コスト削減上の限界がある」。
大型で高価な多目的車を現地生産したり、一部の輸入車で利益を稼ぐスタイルから、小型車で量を追求するやり方への踏み込み。それには新興国向け車種をゼロから開発することが不可欠だった。
カローラの限界が日本国内と同等の「グローバル品質」にとらわれていたことだとすれば、その足かせを取り払う必要がある。則武チーフエンジニアは「今までは図面をすべてトヨタが書いていた。エティオスでは現地に適した図面を部品メーカーと一緒につくった」と振り返る。まずトヨタの要求を提示、そのうえでメーカーがつくりやすい材料や工法を現地で提案してもらったという。
求める品質を満たす潜在力があると見極めれば、トヨタは現地系メーカーにも積極的に声をかけた。その結果、エティオスに部品を納入した100社のうち36社が新規取引先で、うち24社がインド企業だった。
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