「アベノミクス」が選挙の勝者と言えない理由

安倍首相の財政運営は、一段と難しくなった

「アベノミクス」に対して是々非々であるのは、程度の差はあれ自民党内でもそうである。

しかし、自民党内にある意見の相違は、選挙期間中に雌雄を決することはない。特に、小選挙区比例代表並立制である限り、選挙期間中に党内での政策についての意見の相違は覆い隠される。

なぜなら、小選挙区では、自民党は1人しか候補者を立てないから、「アベノミクス」の個別内容について「全部賛成の人か、(実は本音では)部分的に否定的な人か」で争うことは絶対にありえない。比例代表区でも、仕組み上、自民党の候補同士で争うことはない。

与党内力学反映されない選挙、有権者も軍配あげられず

だから、総選挙では、自民党は大勝したが、自民党内の意見の相違に決着がついたわけではない。一方、有権者も、選挙の仕組みからして、自民党内にある意見の相違に対して、どちらかに軍配を上げたくても、どちらにも軍配を上げられないのである。

医療、介護などの社会保障給付のあり方、「岩盤規制」と言われる規制改革、締結を目指すTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の内容、法人実効税率引下げをはじめとする税制改正のあり方など、政府と与党の間では、意見の一致を見ていない政策案件は多々ある。これらの政策は、「アベノミクス」の第3の矢である成長戦略とも密接にかかわっている。

では、これらの政策の決定について、今般の総選挙で、安倍首相に全権を委任したかと言われれば、多くの有権者はそうは思わないだろう。まさに、これが、安倍首相は総選挙に勝ったが、「アベノミクス」が「勝者」でないことを物語っている。逆説的といってよい。

確かに、総選挙の結果は、政府と与党の力学には影響を及ぼすだろう。今後は、政府、特に首相を中心とした首相官邸サイドの意向に、与党内の勢力が抵抗しにくくなるだろう。今般の総選挙の結果を受けて、首相官邸サイドの影響力が強くなることは十分にあり得る。

しかし、こうした意見の対立が残る政策について、与党内の意見を無視して首相官邸サイドの意向だけで政策を推し進められるかといえば、今までもそうではないし、今後もそうならないだろう。

規制改革やTPPなどで、首相官邸サイドと与党との間にある意見の対立を、どう克服して政策を実行するかは、選挙前より首相官邸サイドの意向が強くなるといえども、与党内にある反対意見にも配慮することになるだろう。特に、与党議員が増えた分、意見の集約には、より時間がかかる可能性も否定できない。

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