それでは僕の読書経験はサラリーマンとしては無駄だったのかというと、そんなことはない、というのが今の実感だ。結局、読書で得た知識と「疑う」姿勢が僕の武器になっているのは間違いないからだ。号令がかかった瞬間、迷わず全力でオールをこぐ人のほうが即戦力にはなるだろう。しかし、「本当にこの方向でいいのか?」「オールでこぐよりいい方法があるんじゃないか?」と考える人が必要な局面が必ずある。
今こそが、少数派や異端児たちの出番だ!
本に書かれていることと、社会人として出合う現実。その二つを咀嚼し、架橋するには相応の時間がかかるが、どちらも手放さないことが大事なのだ。僕も時間をかけて自分の特性をチューニングし、会社の中でそれを少しずつ生かせるようになっていった。
考えてみると、会社も僕がそういうやつであることをある程度わかったうえで採用したのだろう。マックス・ヴェーバーやミシェル・フーコーを引用した、ひどく頭でっかちなエントリーシートを書いた僕を書類選考で落とさなかったのだから。最近わが社では、ITやメーカーなど、異業種から来た人の活躍も目立つ。メディアにとっては厳しい状況が続いているが、それまでの「当たり前」が揺らいでいるときこそ、文化系サラリーマンをはじめ、さまざまな少数派や異端児たちの出番なのだ。
というわけで、この連載ではサラリーマンとしての僕の経験を基に、多少なりとも読者の役に立つものを書こうと試みてきた。それがどれほど成功したか心もとないかぎりだが、読んでくださった方には心から感謝したい。そしてさまざまな職場にいるであろう文化系サラリーマン諸君にささやかなエールを。
構成:宮崎智之
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