2つ目の理由としては、中小企業は大企業と組織のあり方が異なることです。中小企業の経営方法がオーストリア人の気質に合っているのではないでしょうか。それにオーストリアでは市場が小さいので、何を行うにしても海外への輸出を視野に入れて計画する必要があり、グローバルマインドにならざるをえないこともあります。
尊ばれるのは、創造性、即興性
――オーストリア人の気質とはどのような気質ですか?
日本人と共通する気質もあります。それは「モノ作り」を大切にし、改善を重視することです。オーストリアは技術開発においても、この100年、世界に貢献してきました。その中からイノベーターが生まれたのです。
ただビジネスに向かないときもあります。技術開発に固執しすぎてマーケティングの観点が抜けてしまうことがあるのです。需要のあるものより、コストを考えずに技術を優先させてしまうことがあり、その傾向は日本にもありますよね。
それと創造性もあるところです。オーストリア人は生活のさまざまなところを「舞台」として演出するのが得意です。たとえば街もひとつの劇場のように、遊び心を持って創っているのです。
――確かに小道ひとつ、建物ひとつとっても、それぞれ芸術ですよね。そういった中で代表的なのが、フンデルトヴァッサーハウス(ウィーンの市営住宅)でしょうか。
はい。新人でも誰でも創造性を持って発揮することは、とても歓迎されます。創造性とともに即興性、とっさのことにどれだけ対応できるかも大切です。予想と異なることが起こってもパニックにならず、それを楽しむのです。その即興性がないと、ハプスブルグなどもこれだけ続かなかったでしょう。そういった即座の対応力は中小企業の経営に向いています。
また、オーストリア人は人生をあまり悩みすぎず、寛容かつ柔軟です。うまく息抜きして、自分を充電してバランスをとっています。
仕事をするときはものすごく集中してこなし、それとともにプライベートも大切にします。会社への忠誠心はありますが、それとプライベートの時間を割いてまで仕事をすることとは違うのです。オーストリアでは長時間仕事をすることが評価にはつながらず、遅くまで働いているとボスに「何をしているんだ?」と言われてしまいます。
集中して時間内に仕事をこなすために物事の決定を早くして、現場のキーパーソンによってどんどん進められます。休みを年に合計5~6週間取りながら、生産性は世界の中でもトップ10に入ることが結果に表れています。
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