21世紀のグローバル経済では、経済成長率とほぼ等しい個人の生産性の伸びより資本収益率が上回るから、資本を持つ者と持たざる者の貧富の格差がさらに拡大する。この本ではそう主張している。
これを踏まえて格差を縮小すべく、各国で協調して年に最高税率が2%の累進的な財産税を導入し、最高税率が80%の累進所得税と組み合わせることを、ピケティ教授は提案している。
グローバルな富裕層は、課税を免れようと財産をタックス・ヘイブンなどへ移そうとするから、それに対抗して、こうした富裕層への課税を国際的に協調することを念頭に置いている。
求められる「経済活力をそがない格差是正」の議論
日本国内でも、格差拡大を批判する人たちは、かねてから富裕層への課税強化に賛同的だ。「所得税の累進税率を高くせよ」とか、「相続税を増税せよ」とか、「法人税の減税には反対だ」、などなど。所得税や法人税は、今般の衆議院総選挙でもいくつかの政党が公約に挙げている論点でもあり、「税こそ民主主義」だからこそ、選挙で問うにふさわしいものである。
格差是正のための税制についての見方は、巷間では二分されるだろう。それは、格差をきちんと是正するべく累進所得税や資産課税を強化するのが望ましいという見方と、平等にしすぎると所得を稼ぐ意欲が低下するから、累進課税や資産課税は強化すべきでないという見方である。
これらは、完全に正反対で、見方が違えば議論はどこまで行っても平行線である。どの程度格差を是正するのが望ましいかについて、人によって見方が異なるのは、当然といえば当然である。
ただ、格差是正ができても経済活力を損なうようでは、身もふたもない。極論で考えればわかりやすい。国民全員を事後的に完全平等にする税制が導入されたらどうだろうか。実際にはあり得ないことだが、もしそうなれば、誰もまじめに働こうとしないだろう。
働いて人より多く稼げば、税制で事後的には働いていない人と同じ所得になってしまうのだから、それが事前に分かっていれば、所得を稼ぐ意欲がなくなる。でも、皆がほとんど働かなければ、事後的に完全平等にできても貧しい状態で完全平等になるだけである。だから、身もふたもない結果になる。
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