累進所得税も資産課税も、一見すると格差是正に効果的と思われるが、経済活動を萎縮させる意味では両刃の剣、トレードオフ(二律背反)である。さらにいえば、国際的に協調して累進所得税や資産課税をしても、タックス・ヘイブンなどによって高率の課税を逃れられてしまえば徴税はできず、格差縮小には資さないことになる。これは、ピケティ教授も提案しつつも実現可能性が低いと認めている。
だから、富裕層憎しで狙い撃ち的に徴税しようにも、結果的に格差縮小に資さないのなら、その方法にこだわっていても埒が明かないというべきだろう。まさに、格差問題を解決しようにも、焦点がずれているといえよう。
低所得者だけ税負担軽減の給付を出す、という解決法
ならばどうすればよいか。経済学界からは、累進所得税や資産課税に代わるものとして、すでに良い知恵が出ている。もちろん、税制以外の格差是正策もあるのだが、ここでは税制だけに話を絞ろう。
それは、消費税率を均一に高くして、一方で低所得者にだけ税負担を軽減する給付を出す、ということである。ピケティ教授への反論として、複数の経済学者がすでにこれを提案している。
消費税は「逆進的」と思い込んでいる人からすると、これでは富裕層に重い税負担を課していないように見える。消費税は、高所得者にも低所得者にも同じ税率で課税しているから、所得に対して「逆進的」ではなく「比例的」に負担を求める税である。
しかも、消費のための支出には、今年稼いだ所得からだけでなくこれまでに蓄えた資産(貯金など)からも充てられる。だから、資産に直接課税すれば資産家に課税できるのは事実だが、資産を取り崩して消費する段階で課税することでも、資産に課税したのと同様の効果がある。そのうえ消費は、生きている限りするものであり、生活を営む場所で行うから、消費した土地で資産家から消費税をとれるのに対し、資産課税だとタックス・ヘイブンなどに逃げられれば徴税できない。
だからこそ、消費税率を高くすれば、そこで生活を営み様々なものを購入する資産家にも逃げられない形で重い税負担が課せる。ところが、これも諸刃の剣なのは、資産のない低所得者にも高い率で消費税の負担を課してしまう。ここが格差是正での難点である。
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