東証と証券会社は「利益相反」の関係へ? 証券会社の猛反対で、取引時間拡大見送り

拡大
縮小
証券会社はコスト増を嫌気して、取引時間の拡大に反対した(撮影:尾形文繁)

だが、同コードの導入は世界的な潮流であり、海外投資家のより多くのマネーを東京市場に呼び込むためには欠かせない、という認識が同会合の大勢を占めていた。

結果として、上場企業は複数の独立社外取締役を選任することや、政策保有株式(持ち合い株式)について、その保有の狙い・合理性を具体的に説明することなどがコードとして規定される見通しになった。

同コードでは上場企業に対して、中長期的な経営計画、収益見通しを株主に示すことも規定される。この点、日本取引所グループが現行経営計画に盛り込んでいるテーマの一つが「取引時間拡大」にほかならない。

中計断念に関して説明責任

ところが、コーポレートガバナンス・コードの輪郭がほぼできあがった25日、日本取引所グループが、その中期経営計画のひとつのテーマの断念を発表せざるをえなかったのは皮肉な偶然である。

取引所にとって会員証券会社は直接的な取引相手である。だが、日本取引所グループを上場企業として見ると、会員証券会社は同グループの株式を保有する株主でもある。つまり、経営陣が提示した取引時間拡大という経営戦略は、一部の株主から否定されてしまった構図にもなる。

株式会社である以上、国際化などの戦略を実行することで収益力を高め、株主の負託に応える責務がある。その戦略を株主に否定されたことについて、日本取引所グループは今後、コーポレートガバナンス・コードに基づいて合理的に説明することを迫られかねない。

次ページ米国では私設市場を創設する動き
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT