AOKI、多角化経営の実践と野望、紳士服市場縮小をカバー《新「本業」で稼ぐ》
青木会長が新事業推進 チェーンストア理論活用も
AOKIが事業の多角化を推し進めている理由は、本業である紳士服の市場環境が厳しいからだ。スーツの価格が低下していることに加え、ビジネスカジュアルやクールビズなど、スーツとカジュアルの垣根がますます低くなり、市場は年々縮小傾向にある。企業としても、紳士服事業だけでは中長期の成長戦略を描くことが難しくなっている。
そんな中、「社員に活躍の場を提供するのがオーナーの使命」と、創業者の青木拡憲会長が推進したのが、1998年のブライダルをはじめとする新事業への参入だった。
リーマンショック後の2009年3月期、紳士服はリーマンショック前に比べ売り上げと利益を大きく落としているが、ブライダルやそのほかの事業は安定した収益を出し、AOKIグループの利益を下支えした(下グラフ)。
紳士服とブライダルでは畑違いに見える。だが青木会長は、人に喜ばれる商品・サービスを提供するという経営理念を考えれば、人生の一大イベントである結婚式を事業に選ぶのは必然だったと説明する。紳士服の店舗では、スタイリストが客の要望を聞いてコーディネートを提案する。ブライダルも客のニーズを聞き、実現していくという点で似ているというわけだ。
多角化はブライダル事業だけではない。紳士服量販店で実践しているチェーンストア理論を活用しているのが、カラオケボックスの「コート・ダジュール」と、インターネット設備やコミックを置く複合カフェの「快活クラブ」。「AOKIでのノウハウを基に、50店から採算が取れるモデルを作り上げた」と2事業を統括する中林佑烝ヴァリック社長は説明する。