AOKI、多角化経営の実践と野望、紳士服市場縮小をカバー《新「本業」で稼ぐ》
年間1000組が式を挙げ、1年の予約待ちは当たり前──。そんな高い人気を誇っている結婚式場が、表参道という好立地にあるアニヴェルセル表参道だ。
ここは紳士服量販店「メンズプラザAOKI」のAOKIホールディングス傘下の事業会社、アニヴェルセルが運営するゲストハウススタイルのウエディング施設。現在、同社では全国の主要都市を中心に12店舗を運営しており、年間約5500組ものカップルが挙式を行っている。
アニヴェルセル表参道で式を挙げたある新婦は、「式場を出るとそこは人通りの多い表参道。ウエディングドレス姿で道を歩いたら、通行人に祝福されて感激した」と興奮冷めやらぬ表情で語る。
その母親は、「表参道の一等地にあるので、都会的でドライな式になるかと思ったが、家庭的な雰囲気で近所や親戚からの評判がよかった」と、ほっとした様子で話す。
結婚式というと以前は、ある程度型にはまったスタイルを踏襲することが多かったもの。しかし、しだいに自分らしい結婚式を求める傾向が強くなり、近年では招待客に楽しんでもらうことに重点を置くようになってきている。
「要望には決してノーと言わず、新郎新婦が思い描くとおりの挙式ができることにこだわっている」とアニヴェルセルの塚田悟社長は語る。家庭的な雰囲気と、晴れの日の演出、招待客へのもてなしをうまくミックスさせていることが、人気を博している理由だ。
アニヴェルセルでは顧客の声を生かし、披露宴会場のテーブルを通常のものに比べ小さめにしている。
通常の式場では8~10人が着席可能な大型テーブルが用いられるため、複数のグループの出席者が同じテーブルになり、ぎこちなさが生まれる。それを避けるため、アニヴェルセルでは4~6人ほどが囲む小さなテーブルに変更し、気心の知れた招待客のみでテーブルを囲めるようにしているのだ。
結婚式に出すスイーツにも力を入れている。定番のバウムクーヘンは50回ほど試作品を作り、納得のいく柔らかさ、味を追求した。こうした各種スイーツを結婚式場に併設されている店舗で販売している。バレンタインデーともなれば、2週間前から店に行列ができるほどの人気だ。「人口が減少すれば結婚組数も減っていく。新たなものを考えていかないといけない」(塚田社長)という事情もあって、ブライダルから派生したビジネスも誕生している。