ドイツをリード役に 回復を模索する欧州経済--ローランド・ベルガー創業者 ローランド・ベルガー

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中国だけでなく他の新興国の声も聞くべき

--それでも、日本にはユーロの先行きをめぐって懐疑的な見方が少なくありません。7月に来日したフランスのフィヨン首相は、「(悲観論ばかりを伝える英米の)アングロサクソン系のメディアの意見ばかりを聞かないでほしい」と話していましたが。

そのとおりだと思います。日本は米国のメディアにばかり、耳を傾けているように思います。EU圏の人口は約5億人。米国の3億人を上回っています。GDPも世界全体の10%。今や米国をしのぐ規模です。日本は欧州大陸の声も聞くべきでしょうね。

さらに言えば、新興国の声にも耳を傾けるべきだと考えています。「新興国」というと、日本では中国がとかく重視されがちですが、世界を見渡せば中国だけが新興国でないのは明らか。インド、南米、中東欧、アフリカ……。これらの多くは米国よりむしろ、欧州とのつながりが深い地域です。メディアの情報が必ずしも英語とは限らないので、私にとっては情報を得にくいのですが。

──新興国と先進国の間では「通貨戦争」と称されるような事態が起きています。

日本は通貨切り下げ競争と一線を画す努力をすべきでしょう。円はユーロやドル、人民元などに対して過大評価されているのは確かです。

ユーロも対ドルでは過大評価されています。購買力平価などを勘案すれば、1ユーロ=1・19ドル程度が妥当でしょう。

ただ、ドイツ企業はユーロ高にチャレンジし、克服することに成功したのです。ユーロ・ドル相場は、00年の1ユーロ=0・8ドル台の水準から、08年には同1・6ドル台までユーロが上昇しました。

日本企業も通貨戦争に巻き込まれるような状況に自らの身を置くべきではありません。ドイツ企業のように独自の努力で競争力を高めることが必要です。

--米国中間選挙では下院で共和党が過半数を獲得するなど、オバマ大統領は苦境に追い込まれました。欧州など世界経済への具体的な影響はありますか。

オバマ大統領は共和党との妥協の道を探らざるをえないでしょう。政略よりもむしろ、市場開放政策などに注力する方向へ舵を切ることになるとみられます。欧州や日本の経済にネガティブな影響が出てくることはないでしょう。ただ、人民元切り上げを求める強硬論は後退する可能性があります。

(聞き手:大滝俊一・週刊東洋経済編集長、松崎泰弘 撮影:今井康一 =週刊東洋経済2010年11月27日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

Roland Berger
米系コンサルティング会社勤務を経て1967年、ローランド・ベルガーを立ち上げる。現在は名誉会長。独ミュンヘン大学経済研究所理事や仏INSEADの役員にも名を連ねている。

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