ドイツをリード役に 回復を模索する欧州経済--ローランド・ベルガー創業者 ローランド・ベルガー
ギリシャショックから約半年。欧州景気はドイツをリード役に持ち直しており、一時期の悲観論は後退した感がある。
欧州最大のコンサルティング会社、独ローランド・ベルガーの創業者に欧州経済の行方やドイツ企業の強さの秘密などを聞いた。
--欧州景気は回復傾向にありますが、金融市場ではアイルランドなどの国債金利が再び上昇しており、「ソブリンリスク(政府債務の信用リスク)」が取りざたされています。
欧州は一つの国ではありません。景気や財政の状態はさまざまです。
2009年の欧州連合(EU)加盟各国の実質国内総生産(GDP)は、前年比3%のマイナスとなりました。これに対して、10年は同1・8%のプラスとなる見込みです。数字だけを見れば、堅調といえるでしょう。
だが、そこには巨額の財政赤字に加えて、加盟国間の不均衡という大きな問題が内包されています。ドイツのように経済の見通しが良好な国もあれば、依然として財政危機に直面している国もあります。
ドイツの09年の経済成長率は4・9%減でしたが、10年は3・5%増とプラスに転じる見通しです。09年の同国の対EU貿易黒字は1200億ユーロ。対ユーロ圏でも800億ユーロの黒字を記録しました。
一方、スペインの同年の対独貿易赤字は220億ユーロ。フランスも同300億ユーロの赤字となりました。財政負担に苦しむギリシャ、ポルトガル、スペインも輸入が輸出を上回る状態。ギリシャ、スペイン両国の10年のGDP伸び率は09年に続いてマイナスとなりそうです。
アイルランドはこれらの国々と状況が異なります。発端は銀行の経営危機。窮地に追い込まれていた銀行の国有化に伴うツケが重しになっているのです。
──ドイツの黒字が突出しているのはなぜですか。
企業の労働コストが相対的に低いためです。00~09年まで9年間の単位労働コストの推移を見ると、ドイツ企業の場合、同期間で3%の上昇にとどまりました。しかし、フランスやスペインでは25~30%もハネ上がりました。こうした格差が企業の競争力の違いを生み出したのです。