ルミネ:有楽町マリオン・西武有楽町跡に自信の出店のワケは?《それゆけ!カナモリさん》

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 ここまでたどってくれば、有楽町マリオンでルミネが取ろうとしているポジショニングは極めて明確だ。前掲の日経の記事に意味深い記述がある。マリオン入居が決まったルミネが、アパレルなどに示している出店要請の文書には、一等地の商業施設にありがちな「高級」という文字が一つもない。さらに、「日本初、エリア初、新業態など、常に話題の中心になります」と力強く書いてあるという。

 11月1日付日経MJの記事では、花崎淑夫会長が同紙のインタビューに答えている。「今は高級ブランド中心の百貨店が中心。ルミネが入り込む余地はある」「20代女性が等身大の自分を楽しめる場所にしたい」などと、いわゆる銀座の百貨店とは明確に差別化する姿勢だ。一方の極、ファストファッションに対しても、「消費者と接する販売員の力が大きく違う」と、脅威ではないと話している。

 ルミネにとって初の駅ソト大型店挑戦となるが、09年3月期まで10年連続で増収増益を達成した自信が、そう語らせるのだろう。もう一点、有楽町という街の変化も大きな追い風要因ではないだろうか。

 東京駅丸の内側の目の前、丸ビルと新丸ビルのテナント。さらにその裏の通りを有楽町のペニンシュラホテルまで結ぶ道はちょっとしたブランド街だ。会社員・OLを中心とした客層。銀座は並木通り界隈がブランドショップの集積地となっており、中央通りの3・4丁目には銀座松屋、三越銀座店がある。集っているのは昔ながらの年配の客層といえるだろう。5丁目から新橋方向は松坂屋があるものの、ファストファッション街と変貌を遂げつつある。平日にはアジアからの観光客、休日には家族連れが多く見られる。そんな丸の内、銀座とは一線を画すのが、有楽町だ。

 有楽町駅を降りると、かつて人の流れはマリオンの阪急と西武の間の通路を抜け、晴海通りに抜けて銀座へと向かっていった。現在は、明らかにもう一つの人の流れができている。有楽町駅前の再開発で2007年10月にできた、丸井を中核とする複合商業施設「イトシア」の辺りから外堀通り方向に向かう。途中、従来からある高速高架下のテナント商業施設「西銀座デパート」を通り、2007年9月に銀座読売ビルの跡地にできた、東急ハンズ銀座店を含むテナントビル「マロニエゲート」へ。

 2007年以前の有楽町界隈は、もっと人が少なく、老若男女の比率も割りと均等。お洒落な人もいれば、ラフな人も多い場所だった。昨今は若年層の姿がよく見かけられる。渋谷や池袋、新宿といった他エリアと異なる上質なオシャレ感も感じられる。その層が、「有楽町スタイル」を訴求してマリオンに吸引したいルミネのターゲットだろう。彼ら、彼女らを確実に振り向かせ、さらに新たな顧客を有楽町に呼び込む自信がルミネにはあるのだ。

 ルミネは、どのような「有楽町スタイル」を見せてくれるのだろうか。有楽町・銀座界隈はどのような街へと変貌していくのだろうか。ゾーニングが進むのか、それとも全体的に若者の街へと変貌していくのか。そのとき、新宿や渋谷と違う、「銀座らしさ」は残るのか--。その変化を想像しながら、有楽町界隈、銀座、丸の内をぶらぶらしてみるのも一興だ。

《プロフィール》
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2010年11月19日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。
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