数十万円もするデニムが「平然と買われる」異変 劣化しにくいデニムは今や「優秀な投資商品」

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あと一番わかりやすく高騰しているのがデッドストックの商品です。4年前にベルベルジンが20周年ということで、501ⓇXXを当時目玉商品として200万円で販売したのですが、同じデニムが現在は400万円近くになっています。デニムパンツの中でも特に濃色やコンディションの良い個体に関していえば、10年前から比べると4〜5倍の価格になっています。

さらに凄まじいのがGジャンの市場です。8年前、ベルベルジンでつけていたワンウォッシュのTバックが59万8000円で、3年前の20周年の時に出した同じコンディションのものが100万円です。もし今、同じものが出てきたらベルベルジンでは700万円はつけると思います。

私がヴィンテージデニムに興味を持ち始めた10代の頃もすでに価格は高騰していて、その後90年代後半まで少しずつ上がっていきましたが、現在のように、ここまで短期間で値段が変わることはありませんでした。

私が思うに、当時のブームは日本国内に限られていたことでしたが、2010年以降はSNSが世の中に浸透したことで国内だけにとどまっていたブームが、タイやマレーシアなど東南アジア諸国を皮切りに、世界中に広まったことで、ヴィンテージデニムというものが世界共通の価格帯になったこと、さらにそれまでヴィンテージデニムに興味がなかった人が、SNSを介して簡単に情報を入手し、投機の対象として参入してきたことが大きな要因になっていると思います。

『日本人が見出したヴィンテージの価値 教養としてのデニム』(KADOKAWA) 。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

さらに手前味噌で恐縮ですが、2020年に拙著、『Levi'sⓇ VINTAGE DENIM JACKETS TYPEⅠ/TYPEⅡ/TYPEⅢ』が出版されたことも影響していると思います。とりわけ大戦モデルやTバックは、もともとの個体数が少ないということもあって、価格の高騰も急だったのでしょう。

ちなみに、私がTバックの存在を知ったのは23年前。買い付けに行く直前に、お客様から「『リーバイスⓇ』の1stの中で、後ろが”T字”になっている大きなサイズのものがあるはずだから探してきて」と言われたことがきっかけでした。

最初は存在自体が半信半疑でしたが、現地に着いた時に体格の大きいアメリカ人ディーラーさんが、ビッグサイズの1stを持っているということだったので見せてもらいました。すると、Gジャンのバックデザインが〝T字〟になっていたのです! その瞬間に「これのことか!」と得心しました。

その後に私も欲しくなり、体格のいい外国人ディーラーさんに片っ端から声をかけまくって、所有している人に対しては譲ってほしいと懇願して回ったのですが、なかなかうまくいきませんでした。

そしてTバックを初めて目にしてから数年経ったある日、とある古着屋でたまたま見つけて、なんと3万円で入手しました。Tバックはサイズが大きすぎたこともあり、当時はまったくと言っていいほど見向きもされていなかったので、天下の「リーバイスⓇ」506XXといえども、お店では持て余していたのでしょう。買ってくれるならと、5万8000円だったものを3万円にまけてくれたのです。

これが私の人生初のTバックです。今、同じものに値段をつけるならおそらく200万円くらいだと思います。

藤原 裕 「BerBerJin」ディレクター

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ふじはら・ゆたか / Yutaka Fujihara

1977年、高知県生まれ。原宿の老舗古着店「BerBerJin」ディレクター。別の名を”デニムに人生を捧げる男”。店頭に立つかたわら、ヴィンテージデニムアドバイザーとして人気ブランドの商品プロデュースやセレブリティのスタイリング、YouTube配信やメディアでの連載など、多岐にわたりデニム産業全般に携わる。マニアからの信頼も厚い、近年ヴィンテージブームの立役者。
YouTube:https://www.youtube.com/c/v-d-a-f-501xx/
Instagram:https://www.instagram.com/yuttan1977/
HP:https://berberjin.com/
 

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