IT武装も最後は「人力」頼みの中国コロナ監視体制 音楽家ファンキー末吉の「デジタル隔離生活」下

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泉州から銀川に戻ってすでに4日が経つ。私が乗って来た飛行機は満席だったわけで、その数百人のみならず、毎日数便がどこかの高リスク地域から飛んで来る。そのすべての乗客にこのように電話をかけて、いろんなことを確認して登録するのが彼女の仕事だとすると、それはそれは気の遠くなるような大変な仕事である。とくに今回担当した相手は外国人である私だ。たまたま電話に出たのが本人でなく中国人だったからいいようなものの、今後はこの外国人と直接話をしなければならない。

ただでさえこの寧夏回族自治区には外国人が少ないのだ。私の知る限り、ここに住む日本人は10人もいない。それに、年齢を63歳(中国では数え年で年齢を言う)と聞いて、「老人じゃないの!! 老人でコロナで重症化しちゃったりしたら私どうすればいいの?!!」みたいな感じなのであろう。最初のうちは「まあ落ち着きなさい」と諭していたヤオヤオ君であるが、そのうちに切れて「人の話を聞け!!」と怒鳴っている。

ヤオヤオ君が伝えたいのは、①泉州で感染が確認された時にはすでに銀川に帰っていた、②泊まっていたホテルは感染者が泊まったホテルとは違う、③しかもそのホテルと宿泊していたホテルは2キロメートル以上離れている、④行動管理アプリは緑色のままで、赤色にも黄色にもなっていない、⑤ワクチン接種を3回も受けていて、銀川に帰る時のPCR検査も陰性だった、だ。結論として彼が伝えたいのは、「この外国人はまったく安全なので隔離をする必要はない」ということである。

「とにかく今日から自主隔離しなさい!」

私が「濃厚接触者」に指定されるとか、万が一陽性であったりすると、彼どころか私が通っているドラムスクールも閉めさせられるし、前日に行ったバーやレストラン、そして何より何百人も集まっていたそのライブハウスの全員が「濃厚接触者」となってしまう。この「高リスク地区に行ったけれども、それはその場所が高リスク地区に指定される前であった」ということを、誰がどのように「濃厚接触者」かどうかと判断するのだろうか。機械的に判断するのならば、この行動管理アプリが示すように私は「緑色」である。しかしこの担当者の判断は……。

このパニックになっている担当者は、ヤオヤオ君に対してヒステリックにこんなことも言う。
「我建议(私はアドバイスする)!!あんたも今日から自主隔離しなさい!!」。自分の愛するこの街を恐ろしい病から守りたいのであろう。「疑わしきは隔離しろ」であろうが、国家が彼に「お前は隔離だ!!」と強制的にそうさせるのなら言うことを聞くが、どうしてこの一担当者の「建议(アドバイス)」によって自分の自由を自分で奪わなければならないのか……。

ヤオヤオ君は、その担当者の上司にも電話をかけて確認している。それは、①もし隔離される場合は隔離施設なのか自宅なのか、②隔離施設の場合、費用は誰が払うのか、③隔離の日数は何日間か、④自分も含めて、私との接触者を隔離、あるいは報告する義務があるのか、だ。とはいえ、結局、上と下とは言うことが違うのだ。上は「自宅隔離は1週間、周囲の人間は隔離しない」という明確なものだった。しかしパニックを起こしている担当者は、とにかくこんな危険な人間は1日でも長く隔離しておきたいのだろう。私の代わりに電話を受けているヤオヤオ君も、濃厚接触者なのだから隔離してしまいたいのだ。

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