メタバースとFF14が「似て非なる」決定的な根拠 制作者の想像の範疇を超えられる自己組織化の要諦

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「ドラクエX」は土地を購入して家を建て、その家の中を好きなようにメイキングできる機能がある。アイテムを作って売ることもできる(対価はゲーム内通貨であり、法定通貨に換金はできない)。釣りの機能も搭載されており、「ドラクエX」にハマっている知人は暇さえあれば釣りばかりしているそうだ。

「FF14」ではなぜかゲーム内に麻雀が実装されていて遊ぶことができるし、有料で結婚式を開く機能まである。自由度が高く、レベルを上げてストーリーをクリアする従来のゲームの側面よりも、生活することに、よりフォーカスが当たっている。

「フォートナイト」の音楽ライブについて先ほど紹介したが、これらMMORPGだって、以前からゲーム内音楽ライブのようなことをやっている。

永続性があり、3D空間があり、アバターがあり、他者とリアルタイムにコミュニケーションができ、クリエーティブ機能がある、という条件がメタバースの構成要素の最小単位なのだと定義してしまうと、MMORPGはすでにメタバースを実現している――という解釈は充分に成り立っている。

しかし、「MMORPGによってメタバースはすでに実現されています」で議論を終わらせてしまうのは歯がゆいし、思考停止と言えるだろう。

MMORPGが満たしていない「自己組織化」

MMORPGと比べたときに、あらためてメタバースとは何か?という問いが浮かんでくる。MMORPGが満たしていない重要な要素を、メタバースの条件に加えてもよいかもしれない。

それは「自己組織化(self-organization)」だ。

自己組織化とは、もとは1977年にノーベル化学賞を受賞したイリヤ・プリゴジンが定義したもので、個々の物質は自律的に振舞っているのに、結果として秩序だった大きな構造が生まれることを指している。雪の美しい結晶が自然とできあがるのも、自己組織化の1つと言える。

人間の組織についても同様で、各々のプレーヤーは組織全体を俯瞰できないし、それぞれ思い思いの行動をしている。にもかかわらず、結果として秩序だった大きな構造(=組織)ができてしまう。それも自己組織化だ。

僕は1人の個人なので、日本の産業全体を俯瞰して見ることはできない。僕だけではなく、政府ですら産業全体を俯瞰してそれをコントロールすることは難しい。だが、大勢の人が自由に働いた結果、秩序を持った形で産業が発展していく。そこには自己組織化が働いている。

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