30年目のJリーグ「IT企業が続々参入」の深い意味 先駆者「鹿島」小泉社長らが語るJリーグの行く末
データ集積・分析に基づくマーケティングや事業展開というのはIT企業最大の強みと言っていい。2021年からJ2・FC琉球の物販・ファンクラブ事業を手がけるマイネットの上原仁社長も「客層を分析し、セグメントごとに区分けして、それぞれのニーズに合った商品提供を行うなどの工夫を凝らしたところ、1年間で物販売り上げが大幅に増えた。IT企業参入によるスポーツビジネスのポテンシャルの大きさを感じました」と話していた。
コロナ禍で加速したEC展開もIT企業の得意分野の1つ。日本最大のフリマアプリを展開するメルカリがまさにそう。同社が蓄積してきたノウハウや知見を駆使して、鹿島ではECサイトを「Shopify」というカナダ大手企業がグローバル展開するECプラットフォームへの入れ替えを進めたところ、以前より非常にスムーズな商取引ができるようになったという。
メルカリからの出向者5人と鹿島のオリジナルスタッフを融合させながら、会社全体の体制を整えつつ、小泉社長は来るべきアフターコロナ時代に備えている。
IT企業がJリーグに続々参入の経緯
このように、テクノロジーや経験値をクラブ経営にダイレクトに注入できるからこそ、IT企業のJ参入が加速しているのだろう。最初に流れを作ったのは、2014年にヴィッセル神戸の全株式を取得した楽天だ。彼らは2017年夏に元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキ(現ポーランド1部、グールニク・サブジェ)を獲得して世間を騒がせると、2018年夏には元スペイン代表MF、アンドレス・イニエスタを年俸33億円で獲得するといった離れ業をやってのけた。
その後、2018年10月にJ2・町田の経営権を取得したサイバーエージェント、2019年夏から鹿島を運営するメルカリ、2021年12月からFC東京の筆頭株主になったミクシィと、巨大企業が活発な動きを見せる。物販・ファンクラブ事業など一部ビジネスを受託するマイネットのような会社を含めれば、IT企業の力を借りていないクラブは少数ではないか。それだけ彼らの影響力は絶大なのである。
とはいえ、上記の参入企業のうち、楽天だけはスポーツやクラブ経営への向き合い方が微妙に異なるようだ。複数の関係者が「IT企業がスポーツに参入するポイントは大きくいって2つある。1つはブランド価値、もう1つがデジタル力注入で発展が見込めること。どちらかに主眼を置くケースが多い」と語るように、まさに前者に該当するのが彼らだ。
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