「私を含めて4人の同期が同じ部署に配属されましたが、まったく話の内容についていけませんでした。採用面接時に『採用されたらエンジニア職に配属される可能性があるけど大丈夫?』とは聞かれていて、昔から自分の苦手を克服することに執着していたからこそ挑戦したんですが、業務以前の段階で挫折してしまって……職場の人たちには申し訳ない気持ちでしたよね」
結局、この会社は10カ月ほどで退職。実家に一時的に戻ったのち、地元の国立大学で1年間の契約職員として働き始めた。
「大学職員時代は大学の広報業務の一環で、各教員の研究内容を民間企業など学外向けに紹介するインタビュー記事の制作に従事していました。そこで同じ課の人たちから文章を褒められたことがあり、ライティングや編集の仕事に興味が湧いたんです。
最初の会社でうまくいかなかったことも影響し、『逆に、次の仕事は他人から評価されたことを仕事にしよう』と思いました」
「評価されたこと」を仕事にしたものの…
転職活動ののち、藤崎さんはとあるネットニュースサイトの編集部に入ることに。ふたたび上京、インタビュー取材などを多く担当することになる。ほぼ未経験で始めた仕事だったが、つねに新鮮で楽しく、やりがいもあった。
ここまでなら、過去の失敗を生かして、よい転職をした人の例だが、そうはいかなかった。働くなかで、徐々に「得意な仕事の中にも、苦手な業務がある」ことに気づき始めたのだ。
「私がいた媒体は、大手新聞社のWeb版のようなストレートニュースはそこまで扱わず、企画を立てて作る記事が主でした。だからこそ企画力が重要だったのですが、『他の人と違う角度から考えて企画を立てる力が、自分は周囲の人と比べると弱いんじゃないか』と感じるようになったんです。
同じ業界には、同世代でいい仕事をしている人がたくさんいました。そういう人たちの記事をネットで見るたび、自分と比較してしまい、劣っているように感じられて。
先輩に相談した際には『たった数年の経験で周りと同じことができると思うなんて、生意気だぞ』と優しく励まされることもありました。そりゃそうだ、と頭では理解できるんですけど……」
本連載でさまざまなアラサーと話すなかで感じることがある。それは、彼らが良くも悪くも真面目すぎる性格で、考えすぎてしまう、というものだ。
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