大人の食物アレルギーに深く関わる「意外な職業」 成人の「10人に1人」が症状を持つ深刻な実態

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子どもの時に鶏卵アレルギーで、すでに寛解(完治したわけではないが病気の症状がほとんどなくなった状態)していた人が、成人になって調理業に従事したために再発してしまったという事例もあります。手湿疹のある手で鶏卵を調理するようになったからです。食物アレルギーの既往のある人は、アレルゲンに頻繁にさらされる環境での仕事は、できるだけ避けたほうが無難です。

原因食物にさらされた人の一部はその食物に対してアレルギーになり、原因食物を経口摂取してもアレルギー症状が起こるようになります。また、毎日の家事で食材の調理・加工をする主婦(夫)も、このようなメカニズムで成人食物アレルギーを発症しやすい可能性があります。

●医療従事者

ラテックスを使った手袋を頻繁に使用する医療従事者や、ラテックスの尿道カテーテルを使用する患者さん、ご自宅でラテックス手袋を使って頻繁に家事をする主婦(夫)の中に、ラテックスアレルギーを発症する人がいます。

ラテックスは、ゴムの樹の樹皮を傷つけた時に分泌される乳白色の粘液で、生ゴムの他、手袋、風船、氷嚢、糸ゴムなどをつくる原料です。

その人が、バナナ、アボカド、クリ、キウイなどを食べた時に、食物アレルギー症状を起こすことが知られています。これを、「ラテックス-フルーツ症候群(latex-fruit syndrome)」といい、ラテックスアレルギーの人の30〜50%が発症するといわれています。

●理・美容師、エステティシャン

理・美容師やエステティシャンも、成人食物アレルギーの発症と無縁ではありません。その理由は、化粧品やヘアケア製品、石けんなどにはしばしば、食物など天然物由来の添加物が含まれていることが関係しています。

皮膚や、眼球結膜、鼻粘膜といった人間にとって最も敏感な組織が、添加物として含まれるたんぱく質由来成分に日常的にさらされていると、たんぱく質由来成分と経口摂取した食物アレルゲンとが交差反応を示して食物アレルギーの発症につながることがあります。

アレルギーになった人はどうすればいい?

調理業や食品加工業に従事していて成人食物アレルギーを持つ人は、疾患のことだけを考えたら異動や転職をするのが望ましいのですが、それができない時は、アレルゲンにさらされないような対策、環境づくりをしなければなりません。

特に手湿疹のある人は、皮膚のバリア機能に異常が生じていて経皮感作(皮膚を介してアレルギーになること)する症例が最も多いため、就業中の手袋の着用や軟膏療法など、適切なケアが欠かせません。

アレルゲンの吸入による経気道感作の人は、職場での換気の向上や、就業中のマスク着用の徹底が求められます。

アレルゲン対策が徹底されないと、経年的にその食物に対するIgE抗体価が上昇し病態が悪化してしまいますが、適切に行えばIgE抗体価は低下する場合があります。

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