「ねえ、私たちには時間がないんだよ」
孤独を恐れない麻里さんに運気が向いて来たのか、それとも美人はやっぱり得をするのかはわからないが、Bさんと別れてわずか1週間後に再び恋愛の季節が巡ってくる。会社の同僚であり、3歳年下の郁夫さんとの出会いだ。
「会社のテニス大会があり、下手なのにフルスイングをしていた私を見て、『自分とわかり合えるのはこの人しかいない』と確信したそうです。どれだけテニス好きなんだという話ですよね(笑)。練習に誘われ、食事にも行くようになり、『結婚を前提に付き合ってください』とストレートなセリフで口説かれました。別れたばかりなので『もうちょっと考えるね』と答えておいて、親しい未婚の同期に相談しました」
「デートするぐらいならいいかな」と思い悩む麻里さんに対して、その同期女性は力強く言い切った。
「デート? そんな中途半端な状態ではお互いのことがわからない。付き合って初めてわかることもたくさんあるよ。結婚するわけじゃないんだから、付き合ってみてダメなら別れたらいい。ねえ、私たちにはもう時間がないんだよ」
友だちを通り越して戦友とも呼べる関係性である。このやり取りを郁夫さんに率直に伝えたところ、「じゃあ、付き合おうよ」との軽い返事。その後も麻里さんへの愛情は途切れることなく、半年後にプロポーズされたときは迷わずにOKできた。
「いくつかの恋愛を経験して、私は愛されている状態が心地いい人間なのだと自覚できました。スネずにあきらめずにグイグイ来てくれる男性の前では、自分らしくいい気分でいられます」
追われると逃げたくなるが、立派な男性が明るくさわやかに追い続けてくれるならば捕まえられてもいい、ということだろう。完全なのろけ話である。
結婚して知った、キレる夫
現在、同僚でもある共働き夫婦として「家事分担は明確じゃないけれど自然と半々」でこなし、思いやりと感謝の言葉にあふれた結婚生活を送れているという麻里さん。しかし、4年間の間には何度も離婚の危機があった。
「虫の居所が悪いときって誰にでもありますよね。ある休日の朝、私は機嫌が悪くて、彼から『どうしたの?』と聞かれてもあまり答えなかったのです。そしたら彼は『無視するな!』と大声でキレたのです。びっくりして謝ったのですが、向こうは怒りが増幅する一方で、その後、1週間も口をきいてくれませんでした。その後にも同じようなことがあり、彼は私の全人格を否定するような言葉を大声でぶつけてくる。いつか本当の暴力に変わるのではないかと感じました」
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