中国の「静かな侵食」に台湾社会がおびえる理由 台湾社会のあちこちに影を潜める中国の存在

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北京側の清華大学。国家主席の習近平氏をはじめ政財界に多くの人材を輩出している(写真・tantan/PIXTA)

2022年3月12日、台湾の蔡英文総統は台湾北部の桃園市で予備役兵の再訓練を視察した際、ロシアのウクライナ侵攻に言及し、「国家を守るには、国際社会の支持と支援以外に全国民の一致団結が必要」と語った。中国から軍事をはじめさまざまな圧力を受けている台湾にとって、ロシアとウクライナの関係は自らの状況と重なるようだ。それまで遠い国に感じていたウクライナに、台湾では多くの同情が集まり、支援の輪が広がっている。

一方で、中国による影響は、軍事的な目に見えるものよりも、むしろそれまであまり気に掛けてこなかった分野にまで及んでいたことがメディアによって報じられ、人々の警戒感が一段と高まった事件があった。

中国による侵食:スポーツ界の例

一つは、2021年11月7日、台湾のウェブメディアである『上報』が明らかにした事件だ。台湾のプロバスケットボールリーグのプラスリーグ(P. LEAGUE+)傘下で、2021年に新設されたばかりの高雄スティーラーズ(Kaohsiung Steelers)が9月に買収されたが、それが中国資本の影が疑われると伝えたのだ。

台湾ではバスケットボールは野球と並ぶ人気スポーツだ。野球は日本人が持ち込んだスポーツということもあり戦前から人気があるが、バスケットボールは第2次世界大戦後に中国から渡ってきた外省人と呼ばれる人々が好んだスポーツとされている。野球に比べ広い敷地を必要としないこともあり、学校教育の中で積極的に取り入れられた。そのため、野球をしなくてもバスケはしたという戦後生まれの台湾人はたいへん多く、人気も高い。プラスリーグはそんな戦後世代の人々の期待の下に設立されたといえる。

しかしリーグでは台湾南部をホームとするチームがなかった。そのような中、2021年5月に南部の高雄市で産声をあげたのがスティーラーズだった。チームが掲げたキャッチフレーズは「地元密着、高雄のためのチーム」。主要株主5人のうちチーム代表ら4人が高雄出身だ。これに中部の彰化出身の実業家が加わる形でスタートした。

当然のことながら、運営資金は潤沢であればあるほどいい。しばらくして台湾バスケ界の往年のスターで、現在は展逸国際プロモーションを経営する張憲銘氏の引き合わせで、香港インフィニーキャピタル台湾の責任者である陳韋翰氏を株主に迎える。

そして気が付けば、陳氏は48.15%を有する最大株主となっていた。陳氏は増資と引き換えに、将来の株の譲渡先を香港インフィニーキャピタルか同社の関係者である銭涛氏とすることを要求したという。乗っ取りという最悪のシナリオは、こうしてできあがってしまったのだった。

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