台湾の人気ヘビメタ国会議員がリコールの危機 繰り返される議員へのリコールに国民党急進派の存在
2021年12月4日、台湾の人気ヘビメタバンド「ソニック」のボーカルであり、かつ立法委員(国会議員)の二足の草鞋を履くフレディ・リムこと林昶佐氏(無所属)へのリコール投票が決まった。投票日の2022年1月9日は、くしくも先にリコールが決まった台中の陳柏惟氏(野党・台湾基進党)の補欠選挙と同日であった。
決定を受け、林氏の地元である台北市の中正万華地区選出の民主進歩党(民進党)系市議会議員らは、リコール要求側の代表で元中国国民党(国民党)の同市議会議員である鍾小平氏(無所属)を批判、相次いで林氏への支持支援を表明した。国政での働きぶりのほか、2021年12月9日と10日にアメリカ主導で開催された「民主主義サミット」直前に行われた関連会議では、アジアから唯一参加した国会議員であることを強調し、台湾にとってなくてはならない議員であることを人々に訴えた。
日本とも関わりが深い林議員
また、2021年5月に発生した新型コロナ市中感染危機の際、感染が急拡大した万華地区選出の議員として、政府や関係機関に対し、医療体制の整備や給付金の獲得などを先頭に立って訴え、地域のために奔走した。地元のために働いていないという批判はおかしい。そして、何度も関係機関から「優秀委員」と評価されているとし、林氏のリコールは万華どころか台湾にとって損失である。ぜひ投票では反対に一票を投じてほしいと、強く呼びかけた。
米中対立が深刻さを増す中、国際社会における台湾の存在意義はかつてないほど高まっている。民主主義サミットだけでなく、2021年11月28日に訪台したリトアニアなどバルト三国議員団との調整でも、林氏は八面六臂の働きで台湾外交を支えていたと言われている。
2021年12月18日の住民投票では、自分自身の信念や考えに基づき、与党民進党が訴えた4つのノー(成長促進剤「ラクトパミン」使用の豚肉などの輸入全面禁止に反対、第4原子力発電所(新北市貢寮区)の稼働に反対、液化天然ガス(LNG)受け入れ基地建設地の移転に反対、大型選挙と住民投票の同日実施に反対)を、自身の口からわかりやすく人々に伝えていた。とくにアメリカからのラクトパミン豚輸入の継続が民意によって示されたことで、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)加入へ大きく前進した台湾だが、林氏の外交力がより必要とされる状況になったと言える。
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