台湾の人気ヘビメタ国会議員がリコールの危機 繰り返される議員へのリコールに国民党急進派の存在

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ところで、林氏の外交手腕は欧米だけにとどまらない。日本とも関りが深いのだ。

40代の林氏は、日本語教育を受けた戦前の台湾人から見れば孫の世代に当たる。故李登輝元総統のように日本語を話し、日本語で天下国家を思考することはない。しかし、林氏はかつて李氏が開校した政治塾で学び、日本語世代の考えを継承した人物でもある。リベラル思想と保守思想の両面を持ち合わせており、古い日本と新しい日本を知っている。このためか、非常に面白い現象として、日本国内で熾烈な論戦を繰り広げる右左両陣営が、台湾を代表する若手政治家と林氏を位置付け、交流を深めているのだ。

林氏に聞く「私がリコールされる理由」

近い将来、日本にとっての台湾との交流窓口は、林氏を中心に構築され、運営される可能性が高い。まさにポスト李登輝以来の知日派、親日派政治家の代表格と言える。林氏の去就は、これからの日台関係の深化にも大きく関係しており、日本から見ても非常に重要な側面を持っていると考える。

それにしても、台湾ではなぜ議員のリコールが相次ぐのか、筆者は林氏に話を聞いた。

「リコールは本来、不適格な政治家を淘汰するための制度です。2020年6月6日、高雄市民は、当時まだ市長就任間もないのに総統選に出馬した韓国瑜氏に不満を覚え、リコールを要求しました。投票では賛成に93万9090票が投じられ、結果、韓氏は台湾で初めてリコールされた首長となりました。これ以降、韓氏を熱烈に支持し極端な主張をする支持者、いわゆる“韓粉”が急進的な勢力として国民党内で力を付け、同党を担いで台湾の各地で火をつけ始めたのです。それゆえに頻繁にリコール要求するようになったのです」と説明する。

また、ターゲットとなった政治家の特徴として林氏は「少数政党、無所属、若さの3つがありました。当選回数がまだ浅いことから選挙区内で強固な地盤を築いていないこととも関係していたからでしょう。高雄市の若手市議会議員の黄捷氏、少数政党である基進党の陳柏惟氏、そして無所属の私へのリコール要求――。しかし、私は理性的な国民党支持者や若者世代が、このような極端な方法を支持するとは思えないのです。より多くの人々が団結し、感情に振り回されないよう、希望しています」と打ち明ける。

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