日本に「危機管理専門」の官僚が足りない根本理由 国民を危機から守るのに欠かせない2つの存在
「この国の形」を模索した第1の改革(明治の統治機構改革=明治維新)、第2の改革(昭和の統治機構改革=戦後復興)に続き、第3の改革(平成の統治機構改革=橋本行革)を成し遂げたのである。
橋本元首相は、「職業としての政治」を体現する政治家であったように思う。
平成の後期以降、日本はさまざまな危機に見舞われてきた。東日本大震災と福島第一原発事故、熊本地震等の相次ぐ震災や豪雨などの異常気象に関連する自然災害、尖閣諸島周辺海域における中国公船の相次ぐ領海侵犯、繰り返される北朝鮮の弾道ミサイル発射、新型コロナ危機。
これらに通底するテーマは、「いかにして国民を守るか」である。それを実行するために、さまざまな統治機構改革が行われてきた。
安倍政権は、外政上の国家安全保障政策を司る国家安全保障会議とそれを支える内閣官房国家安全保障局を設置。また、分散していた陸上自衛隊部隊の指揮命令系統を一本化することで有事や大規模災害への機動力を高めるために、「陸上総隊」を新設した。
菅政権は、新型コロナ危機で露呈した行政のデジタル化の遅れによる危機管理オペレーションの非効率性などの課題を踏まえ、行政のオペレーションを横串で抜本的に効率化すべく、デジタル庁を設置した。
岸田首相は、危機時における政府と自治体の間の指揮統制権限が不明瞭で新型コロナ危機対応で混乱が生じたことなどを踏まえ、内政上の国家的な危機管理オペレーションを統率する司令塔機能の創設を掲げている。
「この国の形」への第4の改革
この、安倍政権→菅政権→岸田政権と続く直近約10年の一連の流れは、安全保障・危機管理体制に焦点を当てた「この国の形」に関する第4の改革(令和の統治機構改革)であると言えるのではないか。安倍政権は外政面、菅政権は横串のオペレーション基盤、岸田政権は内政面の改革を志向しているのである。
岸田政権が、「それにもかかわらず」の気概で、国家的な危機管理オペレーションを統率する司令塔機能を創設し、第4の改革を完成させることに期待したい。「職業としての政治」を体現する固い意志と情熱を示せば、その旗印の下に、「職業としての官僚」を体現する志と能力ある官僚が結集し、改革は実現できる。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら