日本に「危機管理専門」の官僚が足りない根本理由 国民を危機から守るのに欠かせない2つの存在

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活発化する、安全保障・危機管理体制をめぐる議論(写真:ニングル/PIXTA)

「自国は自国で守るというスタンスがなければ、日本もウクライナと同じようなことになる」。ロシアがウクライナに軍事侵攻する直前の本年2月末、小野寺五典元防衛相が危機感を表明した。ウクライナ有事は、台湾有事に敷衍(ふえん)して議論されることも多く、日本の安全保障・危機管理体制に関する課題を突きつけている。

このような状況下、政府は、5月末までにまとめられる自民党提言を受け、年末までに、外交・安全保障政策の根幹となる「戦略3文書」(国家安全保障戦略、防衛計画の大綱(防衛大綱)、中期防衛力整備計画(中期防))を改定する方針だという。

危機への対応ができないとう危機感

日本の安全保障・危機管理体制をめぐる議論は、このような外政面だけではなく、内政面でも活発化している。

岸田首相は、昨年12月の所信表明演説で、「来年の6月までに、感染症危機などの健康危機に迅速・的確に対応するため、司令塔機能の強化を含めた、抜本的体制強化策を取りまとめる」と意気込みを語った。

ウクライナ情勢や新型コロナ危機をめぐる議論の根底にあるのは、「現在の『この国の形』では、国家の最も原始的な任務である危機への対処ができない」という危機感である。

コロナ危機は多くの死者を出し、多くの国民を経済的に苦しめ、日本の危機管理体制が必ずしも国民を守るために効果的・効率的な構造となっていないことをつまびらかにした。が、こうした危機は危機管理体制をどうするのか、という根本のところを見つめ直すきっかけを与えてくれている。すなわち、多種多様な脅威から国民を守るために、日本の危機管理体制を最適な状態へと改革する時期が来ているのである。

それには何が必要か。

そこには、危機の種類によって、大小さまざまな個別具体的な論点が存在すれども、以下の2つの存在はすべてに共通する必須の要素である。

①志と能力の高い官僚
②情熱と固い意志を持つ政治家
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