日本に「危機管理専門」の官僚が足りない根本理由 国民を危機から守るのに欠かせない2つの存在

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能力はどうか。

官僚は、日本という船の運航を担う船員である。彼ら1人ひとりの能力が高くなければ、船は進まず、難破する。しかし、前述の「ブラック霞が関」という職場環境も影響してか、総合職(キャリア官僚)志望者も毎年のように減少し、社会の優秀層が集まらなくなってきたと言われている。

また、入省後も、専門能力を高めるための教育や訓練の場はほぼ与えられない。人事院が、官僚人生の節目節目に、課長補佐級研修や課長級研修などを用意しているが、能力向上に有用だと答える官僚は多くないだろう。

危機管理を専門にするインセンティブはない

官僚機構にとって、国民向けのサービスのために予算は獲得できても、自らの能力向上や、トレーニングのための予算獲得は容易ではないし、目の前の膨大な案件処理に追われる毎日を送る彼らにとって、本務と見なされないトレーニングのために時間を捻出することも難しい。したがって、大抵は、職務遂行の過程で得られた知識をその都度アップデートしていくしかない。

まして、「所属省庁の政策領域における行政機構の運営」という専門性以外の専門能力を磨き続けることは、至難の業だ。とくに、そもそも省庁横断的性格を有する「危機管理」を専門とするインセンティブはほぼないだろう。専門能力をつけようと思えば、手段は自己研鑽のみであり、時間的にも金銭的にも肉体的にもそうとうな負担が必要となるのが現実である。官僚の能力を高め、練度を保つためのシステムが担保されていないのである。

それでは、どうすべきか。

官僚が、高い志を維持し、専門能力向上のために継続的なトレーニングを受けられる仕組みが必要である。例えば、待遇改善はもちろんだが、省庁横断的な「危機管理大学校」を作り、一般の官僚に対して危機管理の専門的な教育訓練を提供してはどうか。

自衛官には「防衛大学校」や「幹部候補生学校」「幹部学校」をはじめとするさまざまな教育訓練校が存在するし、警察官には「警察大学校」、海上保安官には「海上保安大学校」、消防官には「消防大学校」があり、専門的な教育訓練を受ける機会を与えられている。

一般の官僚にも危機管理に関する教育訓練を施し、レベルを向上させ、危機時には平時の年功序列を排してそのような専門を持つ官僚を登用するなど、「職業としての官僚」の本懐を遂げられるような体制を構築すべきだ。

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