近頃、なぜ主要国の中央銀行幹部のコメントが大きな注目を集めるのだろうか。中央銀行が頻繁に金利を変更しているわけではない。新しい経済分析モデルを開発したわけでもない。
金融政策の立案者が大いに注目される背景には、もっともな理由がたくさんある。たとえば、中央銀行の独立性が高まっていること、マネーサプライを監視するには極めて能力の高い専門家を任命する必要があると国民が認識していること、金融市場が深化したことなどが挙げられる。そして多くの中央銀行幹部は、金融危機に際して世界経済の崩壊を防ぐうえで十分に役割を果たしてきた、と正当な評価を受けている。
そもそも危機を招いた責任がある
それでも、マクロ経済予測や政策手段(とりわけ量的緩和)の効果には不確実さが多々ある。これを考えると、中央銀行幹部のスピーチや発言が大きく取り上げられることについて、多くの学者が首をかしげる。また多くの中央銀行幹部は、金融危機を乗り切った後は、あまりにも柔軟性に乏しく、インフレターゲットを超えるインフレを警戒しすぎる一方で、デフレ突入への警戒心が薄すぎる。しかも中央銀行幹部は、そもそも危機を招いた責任の一端を負っている。
私は3つの要因に注目すべきだと考える。第1に、中央銀行トップはすべてに精通しているとの社会通念があるため、政治家の代わりに責められる格好の身代わりになっている。第2に、メディア業界ではIT革命でビジネスニュースの役割が高まり、多くの国のメディアにとっての数少ない収益源の一つとなっている。中央銀行幹部の意見は、ビジネス関係者(とりわけ金融部門)の興味を引き、彼らには広告主の関心が集まる。
第3に、これはおそらく最も卑近な要因だが、中央銀行の政策見解は、少なくとも極めて短期的(1日またはそれ以下)には、金融市場に明確で予測可能な効果をもたらす。もしFRB(米国連邦準備制度理事会)の幹部が、投資家の予想よりも「強硬な」見解を発表して(政策金利に上向きバイアスをかけて)市場を驚かせたら、通常はドル高になり、長期的なドル金利は上昇し、株式市場は一般的には下落する。
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