ウクライナ侵攻で露呈「ロシア軍」驚くべき脆弱さ 携行するのは20年前に期限が切れた食品
ロシアは極めて早い段階でピンポイント攻撃を放棄し、退避しようとする民間人を殺すようになった。これにより、プーチン大統領が長期戦に勝利する見込みは乏しくなった可能性がある。残忍な戦術でウクライナ軍をねじ伏せたとしても、そうした戦術はほぼ間違いなく血みどろの反乱を引き起こし、ロシアは泥沼にはまり込んで何年も身動きがとれなくなるかもしれないと、軍事アナリストらは指摘する。
そして何よりもロシアは今回の戦争で、敵対するヨーロッパの近隣諸国やアメリカに対して、軍事的な欠点をさらすことになった。今後の戦闘で、相手につけ込む隙を与えてしまったということだ。
「この巨大な軍隊は、さして巨大ではないことがわかった」。エストニア国防軍司令官のマーティン・ヘレム中将は、アメリカ軍のマーク・ミリー統合参謀本部議長とともにエストニア北部の空軍基地で行った記者会見でこう述べた。
ヘレム中将の同僚でエストニア空軍司令官のラウノ・サーク准将が現地紙のインタビューで語ったロシア空軍の評価は、もっと露骨だった。「向こう側にあるものを見れば、もはや敵はいないということがわかる」。
予算横領に阻まれた兵器近代化
ロシアがウクライナ全土に展開する15万人超の部隊は主に徴集兵で、その多くは首都キエフの北で足止めを食っている。侵攻開始から数時間で陥落すると予想されていた北東部の都市ハリコフは、ロケット弾と爆撃による猛攻撃でボロボロになってはいるが、依然として持ちこたえている。
「ロシア政府は過去20年間を費やして軍の近代化に努めてきた」。ボリス・エリツィン政権でロシア外相を務めたアンドレイ・コズイレフ氏は、ツイッターでこのような投稿を行った。
「その予算の多くは盗まれてキプロスの豪華ヨットなどに使われた。しかし軍事顧問らはこうしたことを大統領に報告できず、ウソをついてきた。偽りの軍隊だ」
ロシアは戦況についてほとんど情報を出そうとしないため、全体像の把握は難しい。
ただ、アメリカ、北大西洋条約機構(NATO)、ウクライナの当局者20人以上への取材を基にロシア軍のこれまでの実態を分析すると、現場で判断を下す権限を与えられていない若くて経験の浅い徴集兵と、同じく自ら判断を下すことが許されない下士官たちの姿が浮かび上がってくる。
ワレリー・ゲラシモフ参謀総長を頂点とするロシア軍の指揮系統はあまりに中央集権的だ。取材した当局者によると、中尉はささいなことでも許可を求めなければならないという(当局者らは作戦に関わる内容だとして、取材では匿名を条件とした)。