社長が変わらないとジョブ型・DXが成功しない訳 見逃したパワハラが個人ライフシフトを妨げる
企業がシフトしていくために大事なのは、何よりトップが率先して変わることです。自分は変わらないで組織だけが変革されるのを待つなんて、無理な話ですよね。
『ティール組織』という本の著者として有名なフレデリック・ラルーも講演でそのように述べていて、わが意を得たりと思いました。彼は、トップが会社を変えたいと言った時に、当事者として自ら変わる覚悟があるかと問い、その覚悟がないならやめたほうがいいと言うそうです。
『ライフ・シフト2』で、経営学者のリンダ・グラットンが「物語」に注目しているのは、企業変革という意味でも非常に重要なポイントだと思います。つまり、企業が新しい物語を紡ぐプロセスに入ろうとするときに、誰がそれを始めるか、ということです。
答えは、企業内で権限を持つ人、つまりトップにいる人たちです。彼らが旅に出て勇気や弱さを率直に見せることで、周囲は勇気づけられ、一緒に変わっていこうという流れができるでしょう。自分が変わっていくプロセスを見せることによって、組織も変わっていくのです。
その良い例が、両利きの経営を実践したことで知られるAGC(旧・旭硝子)です。当時の島村琢哉CEO、宮地伸二CFO、平井良典CTO、の3人が自ら変わっていく姿勢を示しました。新たなビジョンを掲げ、多様性を受け入れる素地を作り、率先して現場に通い続け、会社の新しい方向に合うように機構や制度を変え、変革をサポートしました。
島村氏を中心にトップ3が自ら旅立ち、従業員を新しい冒険物語に招き入れ、低迷していた業績を立て直していったのです。
人材やソフトへの投資をしよう
多様性を、ポリティカル・コレクトネスへの配慮と捉える人も多いのですが、これからの経営の主流として、決定的に重要な概念になっていくと考えています。
私は、AGCが行っている「CNA(Cross-divisional Network Activity)」という活動に注目し、またそれをサポートしてきました。これは、さまざまなスキルを持った社員が部門の壁を超えて自主的に自由闊達に対話し、通常業務とは違う未知の領域を探索する場で、ガバナンスを効かせた縦のラインとは別の、インフォーマルな横の組織、いわば企業内サードプレイスです。
今、多くの企業はきっちりと組織のガバナンスを効かせていくという方向に向いています。日本企業のガバナンスは、バブル崩壊前まではユルユルでしたが、現在はガチガチ。遊びの部分がないので、企業自体も身動きが取れなくなっているように感じます。
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