ウクライナ政治学者「ロシア牛耳る世界のヤバさ」 暴走止めるために民主主義国にできること

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ロシアは当初、数日間内、短期的にウクライナの主要都市の制圧を目指したが、それが失敗した後、作戦を変えて、民間人の被害を顧みず、都市の住宅地に対して無差別のミサイル砲撃や空爆を加えている。ウクライナ当局によると、数千人のウクライナの民間人が犠牲になっている。

また、100万人以上のウクライナ人はすでに国外脱出し、難民になってしまった。ウクライナ軍は勇敢に戦い、侵略者を止めているが、ロシア軍とウクライナ軍には、圧倒的な戦力差があり、ウクライナ軍は侵略者をどこまで食い止められるかわからない。

筆者自身がキエフ出身で、キエフに実家がある。実家付近でも銃撃戦が行われたと家族からの連絡があった。また、砲弾やミサイルの着弾からの爆音はつねに、数時間おきに聞こえている状態だ。本稿執筆時点では、家族は無事だが、いつどこにミサイルが落ちるかわからない状態で、まったく安心できない。家族の無事を祈るしかないのだ。

ロシアがウクライナでやってきたこと

ロシアは、自国民を保護し、平和を維持するために軍事作戦を実行したと言っているが、これは極めて悪質な嘘である。まずは、自国民保護だが、ロシアが「自国民」と主張している人たちは、ウクライナ国民である。ロシアは2014年にウクライナ東部2州、ドネツク州とルガンスク州の一部を占領し、この地域の住民にロシア国籍を配っている。

ロシア国籍を受け取ったほうが得だと思わせて、苦しい生活を強いられている占領地の人々に国籍を与えているのだ。これは国際法違反で、ウクライナの主権侵害だ。ロシア国籍を配られた人は60万人ほどいるとされている。なかば無理矢理国籍を与えられた人たちをロシアは「自国民」として、その「保護」のために、ウクライナへの全面侵略を犯している。

また、ロシアはウクライナ軍が東部2州の占領地に対して、砲撃を行ったとして、その報復としてウクライナを攻撃したとしている。これはあからさまな虚偽だ。アメリカは2022年1月中、何度もロシアは「偽旗作戦」を実施すると発表している。つまり、ロシアは「自分がウクライナから攻撃を受けた」という自作自演の事件を作り、もしくは事件さえ起こさずに、それを口実にウクライナを攻撃するということだ。

そして、アメリカがこの発表を行った数週間後、ロシアは実際に「ウクライナから攻撃を受けた」という情報を拡散し、その翌週に実際にウクライナへの全面侵略を開始した。

つまり、アメリカはロシアの侵略計画に関する情報を事前に入手できたのだ。ロシアの、ウクライナによる砲撃が戦争の理由だという理屈は、事実と何の関係もない。

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