歴史教科書で徳川綱吉の記述が変わった背景事情 お笑い芸人と歴史研究家がわかりやすく解説

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一方で、17世紀後半からの農業技術の革新や新田開発によって、幕府領の石高は飛躍的に増加しています。そこで吉宗は「支出を減らして収入を増やす」という、いたってシンプルな作戦に出るんですね。

幕府の大事な税収である米の獲得にさらなる力を注ぎ、徹底的な倹約によって歳出を抑えようと考えたのです。

税収増のため米の吸い上げに手を尽くす

まずは倹約令を出し、同時に収入を増やす政策に取り掛かっていきます。が、いかんせん改革の成果が出るまでには時間がかかる。そこで、目の前の財源を確保する緊急措置のため、吉宗は大名たちを頼ります。

吉宗「各大名は石高1万石につき、100石の米を納おさめてほしい」

諸大名「マジ……ですか」

吉宗「ただし。米を納めた者には、『参勤交代の江戸滞在期間を半分にする』というお得な特典がついてきます」

諸大名「マジですか!?」

と、まあ彼らのリアクションがどんなものだったかは知りませんが、この「上米の制」により、暫定的に幕府の税収はアップ。臨時ボーナスを手に入れることに成功したのでした。

しかし、あくまでこれは一時的な処置 。大名から米を吸い上げたところで財政は再建されません。もっと抜本的な解決のためには、大本から吸い上げる必要がある……。ということで増税もします。

これまでの四公六民(年貢4割)から五公五民(年貢5割)へ引き上げて年貢を増徴し、また、「検見法」から「定免法」への変更もおこなうんですね。「検見法」とは、田畑の収穫高に応じて税率を決める徴税法で、「定免法」とは、豊作・凶作にかかわらず年貢の率を一定期間は固定させる徴収法(あまりにも凶作のときは減税される)。なので、幕府には安定した年貢が米込む……舞い込むようになりました。

さらに「新田開発の奨励」によって、耕地面積もしっかりと増やすなど、各政策により幕府に入ってくる米の量はとんでもなく増えました。

てことで、この改革は大成功……、とはなりません。実は、このときの幕府には〝1番の難問〞が残っていたんです。

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