治験のスピードアップで日本に革命を起こす--国立がん研究センター理事長 嘉山孝正
--8月25日の中医協総会では、海外の有力論文や臨床データなどにより、既存医薬品の効能追加について、有効性・安全性が「公知」であると見なされた場合には、薬事承認前であっても保険適用を認めるという新ルールの導入を承認しました。嘉山さんの強い働きかけが実現した形になりますか。
今回は患者さんたちが声を上げたことが大きかった。70もの患者会が7月に適応外医薬品の早期保険適用を、厚生労働大臣や中医協会長、私などに連名で要望した。私は患者さんの声をバックに、中医協でしっかりしたエビデンスに基づいて発言した。それゆえに大きな反対もなく、すんなり通すことができた。
今まで中医協は何をやってきたのかと問いたい。国民や患者さんの意見を反映させるのが中医協の本来の役目だ。再審査期間が過ぎて、有効性・安全性が確認済みの医薬品であれば、適応外の医薬品であっても保険給付の対象とすることができるというルールが30年前からある。しかし、それが活用されてこなかったのが実情だ。健康保険組合など支払い側は、加入者である患者さんを守ってきたといえるのか。大いに反省する必要があると思う。
──適応外医薬品のドラッグラグ問題解消策に続いて、治験促進で新たな一手も打ち出しました。
あまり知られていないが、ドラッグラグを引き起こしている最大の原因は、製薬会社の治験(新薬承認を目的とした臨床試験)の着手が遅いことにある。
日本製薬工業協会・医薬産業政策研究所の調査結果(2008年2月『政策研ニュースNo.24』掲載)によれば、ドラッグラグの要因としては治験着手時期の遅れがいちばん大きく、次いで臨床開発期間の差が大きい。医薬品医療機器総合機構による審査期間の差は意外にも差が小さいという結果だった。すべてのラグを合算したところ、日本国内での新薬の市販は欧米から約4年遅れているという結果が出ている。