治験のスピードアップで日本に革命を起こす--国立がん研究センター理事長 嘉山孝正
それではまずいので、治験のスピードアップを成し遂げるべく、革命的な制度を新たに生み出そうと考えた。10月8日の「都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会」では、私の発議により、「臨床試験部会」の設置を全会一致で決定。要は、都道府県がん拠点病院を新薬の治験の場として使おうということ。今までは症例数がなかなか集まらずに、治験のスピードで米国など海外に負けていたが、一気に解決を狙う。これが革命なんです。
──今まで拠点病院は治験をあまりやってこなかったのですか。
もっぱら治験は大学病院で行われ、拠点病院はあまり関与してこなかった。がん対策の旗振り役であるわれわれが役割を果たしてこなかったことも原因だ。今回はオールジャパンでの治験システムを構築する。国立がん研究センターが支援する研究グループの「日本臨床腫瘍研究グループ」(JCOG)がプロトコル(手順)を厳しくチェックすることで、高いレベルの治験の質を維持する。医療安全を重視しながら、症例数を集めてドラッグラグを解消する。国立がん研究センターは、その旗振り役を務める
──製薬業界の協力も必要です。
日本製薬団体連合会の庄田隆会長(第一三共会長)に協力をお願いした。製薬業界は一致団結してドラッグラグの解消に全力を尽くすことで合意していただいた。
特区制度を活用して未承認薬に保険適用も
--患者の要望が大きい国内未承認薬の使用については、保険診療との併用が可能な「高度医療制度」を活用する方策を厚労省が検討しています。
診療科単位で「特区」(機関特区)に認定された医療機関に限り、治験中である未承認薬の使用に保険を使えるようにしたらどうかと考えている。全国の約80の大学病院の一部にその役割を担ってもらう。苦しんでいる患者さんが早く未承認薬を使えるようにすることに反対する人はいないと思う。医療費も大して増加しない。もちろん、この仕組みに乗るのは、海外ですでに承認されている医薬品に限られる。