治験のスピードアップで日本に革命を起こす--国立がん研究センター理事長 嘉山孝正
嘉山孝正・国立がん研究センター理事長は、ドラッグラグ問題(欧米と比べての日本での新薬開発の遅れ)解決の旗振り役を自他共に認める人物だ。
厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)委員として、抗がん剤ジェムザールの卵巣がんでの効能追加など、適応外医薬品(欧米では標準的に使われていながら、日本では効能効果・用法用量について未承認の医薬品)の早期保険適用で、新たなルールの導入を実現した。
また、わが国のがん対策の司令塔である、国立がん研究センターの理事長就任とともに、「がん難民対策」の実行を宣言。「がん相談対話外来」開設など、矢継ぎ早に患者本位の経営方針を打ち出した。嘉山理事長に、がん治療薬などのドラッグラグ問題への取り組みについて聞いた。
--ドラッグラグの現状についてどう見ていますか。
ドラッグラグについて世間は大騒ぎしているが、エビデンス(科学的な証拠)をきちんと示したうえで、対策を練ることが重要だ。
国立がん研究センターで調査したところ、国内未承認薬・適応外医薬品が有効と考えられるがん治療薬は42種類あるという試算結果が出た。それによれば、未承認薬・適応外医薬品を必要とする患者は4・6万~12万人、薬剤費にして460億~1840億円となっている。
言い換えると、保険診療で賄ったとしても、このくらいの金額で済んでしまうということ。あくまで推計だけれども、驚く金額ではない。しかし、薬を待っている患者さんの実情は深刻だ。