絶滅危惧種、小田急ワイドドア車の数奇な運命 開口幅は2m、混雑緩和の切り札だったが…
小田急電鉄では、「白いロマンスカー」こと50000形「VSE」が2022年3月のダイヤ改正で定期運行から退くことが発表されている。このロマンスカーに加え、通勤車両でも引退がささやかれる車両がある。1000形のワイドドア車だ。
1000形は1987年に登場した通勤車両だが、一部の車両では扉の幅を広げたワイドドア車として造られた。1000形のワイドドア車は、既存の1000形と区別する意味で1500形とも呼ばれている。
ワイドドア車が登場した1991年はバブルは崩壊したもののまだその余韻が残っていた。通勤ラッシュが激化する一方、根本的な輸送力増強となる複々線化の事業は遅々として進まない状況だった。列車本数も限界まで増やしていたのだが、混雑のため乗客の乗り降りに時間がかかってしまう。そのため列車の運転間隔が延びてしまい、輸送力が落ちて混雑がさらに増してしまうという問題があった。
こうした問題を解決するべく、造られたのがワイドドア車だった。扉の幅を広げて乗降時間の短縮を図り、定期運行の確保や混雑緩和を目指している。
1000形は196両造られたが、このうち、36両がワイドドア車だった。後継車両の登場により、1000形は2020年から廃車がはじまったが、ワイドドア車も廃車が進む。先んじて1000形ワイドドア車は全車両が姿を消すことになりそうだ。
扉幅2mを誇った1000形
扉の幅を広げて乗降時間の短縮を図るとして、ワイドドア車ではどのくらい幅を拡大したのだろうか?
一般的な通勤電車では、扉の幅を1.3mとして一度に3人程度が乗車できる幅としている。だが、1000形ワイドドア車では当初、扉の幅を2mとして一度に5人程度が乗車できる幅としていた。ただし、先頭車の乗務員室脇の扉は寸法が確保できず、1.5mとしている。
1000形のワイドドア車では扉の幅を広げただけでなく、当時としては珍しい車内設備も導入していた。
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